日本史の「事始め」22 平和のコツを体験学習

日本列島に関する記事を初めて登場させたとされている中国の歴史書が、
いわゆる「魏志倭人伝」です。 
ただし、これはニックネームの類で、もう少し堅苦しい表現なら、
~「三国志」中の「魏書」第30巻烏丸鮮卑東夷伝倭人状~
になるとのことです。 一生覚えられそうにありません。

書き手は中国西晋の歴史家である陳寿(233-297年)で、そこには当時日本列島
にいた民族・住民の倭人(日本人)の習俗や地理などが記されています。
そればかりか、実は歴史や政治状況とも言えそうな部分も見られます。


 gishi_wajinden_02.jpg 魏志倭人伝 

~帯方(朝鮮半島西海岸)の南東の大海中にあった倭人の国は多くの
 小国に分かれ、男王が統治していた。
 この頃(2世紀後半)に大いに乱れて小国同士が抗争したが、卑弥呼を
 女王に擁立して連合国家的組織をつくり、安定した~


一口で言えば、群雄割拠の戦国騒乱の時代だったということでしょうか。
これが「望ましい状況」でないことは、諸国諸王も認識していたはずで、
そこで「緩やかな連合国家もどき体制」を構築することで、ともかくは戦乱
を回避することに努めたようです。

戦時と平時の違いはありますが、組織的には20世紀に構築された
「ヨーロッパ連合(EU)」に似たものだったかもしれません。
ドイツやフランスなど、参加諸国の独立性は担保しつつ、互いの協調と連帯を
重視しようという姿勢です。

その組織のトップは「欧州理事会議長(EU大統領)」とも表現されますが、
2世紀後半の日本列島も同じように、倭国連合のトップに擁立された者が
いました。 女王・卑弥呼(生年不明-248年?)です。
幸いなことにこの試みは、小国同士の抗争を鎮火させ、政治的な安定を得る
ことになりました。

ですから、この時の倭国連合の有様を一口で評するなら、こうも言えそうです。
~諸国の首領同士では、どうしても打開できなかった状況も象徴女王・
 卑弥呼を立てることで、どうにか折り合いをつけることができた~


その卑弥呼が、実権女王ではなく象徴女王的な存在であったことも、実は
さりげなく紹介されています。
~卑弥呼は一生夫をもたず、その政治は弟の補佐によって行なわれた~

多分「弟の補佐」という表現は必ずしも精確な表現ではなく、実際には
「弟が実権者」といえるレベルにあったように思えます。
倭国連合・女王という立場に祭り上げられた卑弥呼にとって、最も大切なことは
政治的実力よりもそれを演出するカリスマ性だったからです。

以下の紹介が、そのことを裏付けています。
~卑弥呼は「鬼道に事(つか)え、能(よ)く衆を惑わ」し、その姿を見た者は
 まれであった~
 では、なんで卑弥呼の姿を見た者がまれだったのか?

~(卑弥呼は)兵士に警備された壮大な宮室を営み、常に 1000人の
 婢(女の召使い/奴隷)にかしずかれ、取り次ぎは居室への出入りを
 許された 1人の男によって行なわれた~
 
まさに「深窓の女王」?を演出していたわけです。

こんなカリスマ性濃厚な環境から、折に触れ鬼道(神懸り)により
お告げを発出するのですから、諸国の首領たちもそれには反抗しづらい。
~方針には正直不満もあるが、女王に文句言おうにも面会もできないのだから、
 結局当方が折れて出なければしょうがないのかなぁ~


しかし、こんな説明も加えられています。
~倭には、女王の都する邪馬台国を中心とした国々が存在し、また女王に
 属さない国々もあった~

ですから、従順一辺倒というわけでなく、諸国の中には力ずくで不満を表す
首長もいたということなのでしょう。


 himiko_yasuda_51.jpg toyo_wakoku_01.jpg
      女王・卑弥呼 / 女王・台与
 
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このあたりを少し整理してみると、こういうことになりそう。
~倭国では70-80年間ほど男性の王の時代だったが、5-6年間ほども内乱が
 続いたため、その後に一人の女性(卑弥呼)を立てて王としたが、既に
 高齢だった~


人間遅かれ早かれ、高齢の後には死が待っています。
普通はこの順序で、死の後に高齢が待つことは滅多にありません。
当然、高齢・卑弥呼もほどなく亡くなりました。

その時期については「242年~248年」の間を中心に数多の見解があるよう
ですが、筆者的には「日蝕」との関りを重視した「248年説」が気に入って
います。
太陽の女神であるにも拘わらず、事もあろうにその太陽が欠けるという
超異常事態「日蝕」を引き起こしてしまったのですから、卑弥呼は当然
その責めを負わねばなりません。

~こんな大々変事は、ひとえに卑弥呼の不徳の致すところである~
「鬼道」能力が備わっていることが卑弥呼の存在意義だったのに、信仰対象で
ある太陽を欠かせてしまうという大失態「日蝕」を引き起こしたのですから、
責任追及は当然で、それが「責任を問われた卑弥呼は殺された」という説に
繫がっていきます。

卑弥呼が死ぬ(殺される)と、魏志倭人伝は、
「卑弥呼以死、大作冢、徑百餘歩、徇葬者奴婢百餘人」
つまり、大規模な塚(墓)が築かれ、奴婢 100余人とともに葬られたと伝えて
います。
えぇ、その100余人の奴婢は、おそらくは自らの意志による「殉死」ではなく、
本人の意志に拘わらず、ほぼほぼ無理矢理に「殉葬」されたものでしょう。
昔のこととはいえ、考えてみれば随分とむごいお話です。

卑弥呼の死後は男王が継ぎました。
ところがギッチョン、国中がこれに服従せず内乱続きの国情に逆戻り。
そのため、再び「女王」を立てました。
かつての成功体験を思い出したというところでしょうか。

新女王に就いたのは旧女王・卑弥呼の宗女(一族の娘)である、この時13歳の
台与(235?-没年不明)でした。
ただ、卑弥呼の死が筆者の希望?する248年で、235年生まれの台与が13歳で
新女王になったとすると、卑弥呼の死から台与の女王就任までの時間は
ほとんどなかったことになり、では内乱が続いたのはいつのことだと
ツッコまれてしまう心配もあるのですが。

それはともかく、やはりこの時も内乱は収束したとされています。
ただそれ以降については、こんな記録が残されているだけで、詳しいことは
よく分かっていません。
~(国内混乱を収束させた)台与は魏に使いを送り,魏滅亡後も
 西晋(→晋)と外交関係をもち、266年に遣使した記録が残されている~


こうした一連の出来事から、卑弥呼と次の台与の時代の(日本)民族は、
一つの体験学習をしたような気もします。
~内乱収束にはトップに象徴女王を置くが一番の早道じゃい~
これが平和再構築のためには最も確実な方法ということを「歴史的事実」と
して肝に銘じたと言っていいのかもしれません。

だとしたら、筆者的には腑に落ちないことがないでもありません。
倭から大和への発展の過程において、諸国のトップは大王なり、それと同じ
意識を持たせた称号を名乗るようになり、やがて国号を「日本」とするや、
ほぼほぼ同じ時期に国のトップを「天皇」と称するようになっています。

そして、その初代とされる神武天皇の即位年を西暦に変換すると「前660年」
になります。
これだと、卑弥呼や台与の時代より900年ほど以前のことになってしまい、
いささか眉つばチックな印象になりますが、ともかく時代とともに、その
「歴代天皇」も増えていきました。

おそらくは「歴代天皇」の時代に至ってもなお諸国においては「大騒乱」的な
局面もあったに違いありません。 つまり、何が言いたいのか?
~歴代天皇の時代にも国内大騒乱があったとしたなら、民族の歴史体験から
 しても、もっともっと早い時期に女性天皇(つまり女王)が登場していた
 方が自然なのでは?~

最初の女性天皇とされているのは第33代・推古天皇(554-628年)ですから、
時代的には卑弥呼・台与の時代より300年以上も後のことになるのです。

~歴史から学ぶことが下手なのは、昔の昔から備えた(日本)民族のDNA~
そう言われかねないとことですが、ただ、卑弥呼・台与をすっかり忘れていた
わけでないことは、この最初の女性天皇の諡名「推古」(古を推し量る)にも
よく示されています。 つまり、
~昔(卑弥呼・台与の時代)のイメージを復古させた女帝(女王)~




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