日本史の「お国自慢」17 やっとかめ文化祭2018

どうやら、数えて6年目ほどになるようですが、今やすっかり名古屋の秋の
恒例行事となった感が漂う「やっとかめ文化祭」を今年もチョロっと覗いて
みました。
本年(2018年)10/27(土)~11/18(日)を期間として、名古屋の街全体を
会場にする形で、例年のように 
○芸どころまちなか披露 ○芸どころまちなか舞台 ○まちなか寺子屋 
○まち歩きなごや
など、多彩な企画が用意されました。
今回筆者は、その「まちなか寺子屋」の~見て・聞いて・体験する「ナゴヤ学」~
と銘打った数多の講演の中から選んだ一つに参加してきました。

ついでですから、もう少し詳しく報告しておくと、
講師:井沢元彦氏(「逆説の日本歴史」の著者/名古屋出身)
講座:ナゴヤ歴史探検~ロマンス神話と名古屋の古墳~
日時:2018/11/17(土/文化祭セミ最終日) 10:30~12:00
費用:金五百円也(文化を大切にする「芸どころ名古屋」は太っ腹!)
会場:中日新聞社 北館4Fホール(名古屋市中区三の丸1-6-1)
詳細:やっとかめ文化祭https://yattokame.jp/

後から気が付いたのですが、本講演に「ナゴヤ歴史探検」という言葉が
冠されているのは、どうやらそれなりの理由があってのことだったようです。
実は、市内中学生の“郷土の歴史を学ぶ副読本“として、平成30年度から
生徒に配布されることになった「ナゴヤ歴史探検」
(発行:名古屋市教育委員会/発売:ぴあ/\896)という本の特別監修に
携わったのが、他ならぬ今回講演者の井沢元彦氏ですから、市民全般の
関心を引くためには、どうしても講演タイトルにこの「ナゴヤ歴史探検」と
いうキーワード?を付け加えたいのが、主宰者・名古屋市の本音だったかも
しれません。

それはともかく、井沢氏のお話はメッチャ古く「文明」の誕生というところから
始まりました。
人類が誕生して数万年の間における「人間の生活」には大きな変化が
見られません。 その理由として、生き永らえるためには食糧確保の活動が
欠かせず、時間の大部分をそれに割く必要があったことが挙げられ、
このように「食うに追われる毎日」では、とてもじゃないが文化とか文明は
育たないということのようです。

しかし、まだまだ厳しい生存環境には違いないものの、農耕などの技術を
覚えたことによって「食料の備蓄」が可能になると、それ以前の
「食うに追われる毎日」とは明らかに異なる環境が出現します。
今から数千年前のこと、そのように「食糧確保のため以外の時間」を持てる
ようになった地域の人類が初めて「文明」というものをを手にしました。

早い話が、「文明を知る人類」?が登場したということで、そして文明は子孫に
情報を伝達するための文字の発明となり・・・
このようにお話は進み、そうした情報を次世代に伝えるために記録する
媒体(ツール)についても触れていきます。

当初利用されたのが粘土であり、パピルスであり、はたまた竹簡などですが、
やがてはそれに代わるものとして「紙」が中国で発明されます。
こうなると、情報の集積・再利用が格段に便利になり、文明・文化はそれこそ
飛躍的な進歩発展を・・・

こんな具合に、尾張言葉で言うなら「デラ(とっても)古い」ところから始まった
井沢氏のお話は、歴史を凝縮させた濃さをもって進み、そうこうするうちに、
今回のテーマである~ロマンス神話と名古屋の古墳~へとたどり着きました。

この講演のタイトルにある「ロマンス神話」とは、ご想像の通り、日本武尊
(倭建命/ヤマトタケル)とその妻・宮簀媛(美夜受比売/ミヤズヒメ)に関する
経緯です。
何せ名古屋のイベントですから、お話は当然のように「草薙剣(三種神器)」
にも、さらにはそれを祀る「熱田神宮」にも及ぶのですが、そうなると、そのすぐ
近く、徒歩セカセカ五分ほどの場所にある「古墳」を打っちゃっておくわけには
いきません。

なぜなら、これらの古墳の被葬者こそ、「日本武尊」(白鳥御陵)であり
「宮簀媛」(断夫山古墳)とされているからです。
但し、このロマンあふれる結論?は、あくまでも神話的伝承に立ったもので、
考古学的には、いささか無粋に地元の王「尾張氏首長」と比定されているよう
です。

やっとかめ文化祭









やっとかめ文化祭2018

古墳原型01 








復元:建造当初の古墳の姿(しだみ古墳群/名古屋市)

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さて、「三種神器」の登場ともなれば、お話は「天皇」にも触れざるを得ません。
そこで、お話はこのイザナギ(男神)とイザナミ(女神)の「神様御夫妻」による
黄泉の国のエピソードから、皇祖神とされる「天照大神(アマテラス)」の誕生
へと移っていったのですが、そこで留意を喚起されました。

~重視すべきは、アマテラスはイザナギ・イザナミ夫婦の「まぐわい」(性交)に
  よって誕生したのではなく、イザナギの「禊(みそぎ)」の行為によって、
  彼の左目から生まれたとされていることです。 「禊」の最中に生まれた
  ということは、要するに一切の「穢れ」を排除した清浄極まりない至高の
  存在である、と言っているわけです~


そして、時間の都合もあって、この「穢れ/禊」についての説明はホントの
概要だけに留め、こんな口上も。
~さらに詳しくお知りになりたい方は、拙著「逆説の日本史」を通読して
  いただくのが一番いいのですが、何しろ現時点で二十数巻にも達している
  ため、それだけの時間がないという方も多いかもしれません~


確かにその通りで、しかもその後の部分は現在なお執筆中ということです
から、通読はメッチャ大作業になりそうです。
~それだけの時間がない皆様には最近出版した拙著「日本史神髄」※が
  最適かもしれません。 ここには「穢れ」「和」「怨霊信仰」など、日本史の
  理解を深めるために必要な基本的な概念を一冊にまとめてありますので、
  割合に手近かと思います~

※「日本史神髄」(著:井沢元彦/小学館新書/\907)

そんな息抜き?も挟みながら、今度は用意されたスライドに映し出された
「古墳」へとお話は進んでいきます。
~これが本来の「古墳」の姿を復元されたものの写真ですが、ひょっとして、
  皆さんがお持ちになっている「古墳」のイメージと、どこか違うところは
  ありませんか?~
 あるんですねえ、それが。

井沢氏の説明によれば、どの「古墳」も「人工物」であることを強調するために
樹木の無い状態で建造されたそうです。
その存在を誇示することが重要な「権力者の墳墓」ですから、それが自然の
風景に溶け込むような造形になっていたのでは、確かにイマイチかも
しれません。

~ところが、皆さんもイメージされた通り、現在の「古墳」は、中腹と天辺と
  いい、「樹木」がワンサカ生い茂った状況を当たり前としています~

そう、そうなんだよねぇ! 筆者もそこが異なると思ったところへ、さらに、
~これって、じつは「古墳」を管理する宮内庁の大怠慢ってことなんですよ。
  だって、一般人の家庭でいうなら、「先祖代々の墓地」を手入れもせずに
  雑草をボウボウに生やしたまま放置していることになるわけですから~


なるほど、そうかもしれん。 
しかし反面、何もそこまで目くじらを立てなくてもと思っていたら、
~「樹木」というのは根っ子の張り方の力にはとても強いものがあります。
  一般の住宅でさえ、庭木の根っ子が成長することで、その近くの塀を
  傾斜させてしまったり、土中に埋設された排水桝などを破壊してしまうことも
  決して珍しくはありません。 
  土中に張る樹木の根っ子のパワーはそれほど強いものなのです~


なるほど、そういう光景は確かにいくつか見たことがあるなぁ。
~つまり、樹木の根っ子の成長は、肝心の古墳内部の石棺を傷つけたり、
  あるいはそのことによる雨水の侵入などで埋蔵物を変質させてしまったり、
  こうしたリスクを抱えていることになり、つまりは正しい保存とはほど遠い
  状況にあると言わざるを得ません~


ということなら、早速に散髪して丸刈り、つまり建造当時の「樹木無し」の
スッキリ体形に戻してやればいいことじゃん。
事情を知らない筆者なぞはノーテンキにそんな風に結論付けます。
ところがギッチョン。

~現在、古墳は宮内庁の厳しい管理下にあって、研究のためであっても、
  一木一草に変更を加えるどころか、その敷地内に足を踏み入れることさえ
  許されていません。 その理由は、天皇家所縁の遺物は、とにもかくにも
  ご無礼のないよう大切に扱わねばならん、ということのようです。
  しかし反面では、その大切な古墳(遺物)が樹木によって日々破壊されて
  いく惨状を平気で見過ごしているわけですが~


そういうことなら、宮内庁はメッチャ矛盾した言動で、歴史研究者を困らせて
いることになるではないか・・・由々しき事態だ。 責任者、出てこい!
ということで、地元名古屋恒例の「やっとかめ文化祭」で、本年も楽しい
ひと時を過ごせたというわけです。

ちなみに、講演終了はちょうど正午・・・腹減り筆者は脱兎のごとく建物を
後にして、かなりの急ぎ足でラーメン屋へ駆け込んだのですが、それがまた、
その時間帯の限り「ごはん無料」という運の良さ。
充実の講演と旨いラーメンに出会え・・・余は満足じゃ!



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