日本史の「謎解き」24 井沢元彦著”謎の真相”の不可解

「逆説の日本史」シリーズで、斬新な視点で日本史の見直し
作業を進めている著者・井沢元彦氏によるメッチャ長い書名の
学校では教えてくれない日本史の授業 謎の真相が、つい
先日のこと刊行されました。(2016・2・3/PHP文庫 第1版・第1刷)

「井沢日本史」のファンなら、このこと自体は素直に歓迎したい
ところです。  しかしながら、それが今度ばかりはちょいと問題
ありで・・・ ※以下、「逆説の日本史」シリーズは 「逆説」
「学校では教えてくれない日本史の授業 謎の真相」新刊「謎の真相」


この新刊「謎の真相」、実は“まえがき”の部分で本年のNHK
大河ドラマ「真田丸」にも触れており、またその本文も、時々
~興味があれば「逆説」の○○編を~との案内?注釈?まで
添えるなど、割合親切な書き方になっています。

ということは、読者としては普通このように受け止めます。
~その内容は、「逆説」既刊分および、それ以降における
  著者・井沢元彦氏の最新の主張・見解に違いあるめぇゾ~


ところが、そうした前提に立って、新刊「謎の真相」を読んで
みると、実はなんとも不可解な説明にも行き当たるのです。
不可解とは・・・「逆説」で展開していた主張を、著者自らが
覆したかのように読める箇所がいくつかあるという意味です。

具体例を一つ挙げるなら、江戸幕府五代将軍・徳川綱吉が
実施した「生類憐みの令」がまさしくその通りで、なんとも
「不可解」?な説明になっています。

この部分における「逆説」での主張を要約すれば、
~確かに“劇薬”ではあったものの、人々が心に残していた
  戦国の世の荒々しい気風を、戦さのない時代に合う意識
  (人命尊重)に改革するために必要とした法でもあったし、
  また、それを断行した将軍・綱吉もエラい~

要するに、「将軍・綱吉」にも、「生類憐みの令」に対しても高い
評価を与えているわけです。 

ところが、新刊「謎の真相」になると、
~綱吉は狂気の人あった。 前代未聞の悪法「生類憐みの令」、
  これは人間の尊厳というものを破壊した法律である~


もうなんともケチョン 〃 の評価になっていますから、これでは
「逆説」における氏の鮮やかな切り口に感銘を受けた読者の
頭の中はたちまちド混乱?に陥ってしまいます。

この不可解な落差?は、いったい何なのだ! 
ここに謎?を感じたワタシは普段の怠惰癖を捨て、その検証に
重い腰を上げたわけです・・・いわゆる「探偵」ゴッコですね。 
その結果、こちらの謎の真相?はこんな結論に至りました。


井沢謎52 井沢謎55












新刊「学校では・・・謎の真相」  元本「歴史謎物語」

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発刊された本には、日にちなどを表記した奥付と呼ばれる頁が
あります。 そして新刊「謎の真相」では、その奥付の前頁に
井沢氏の経歴・著作を案内した著者紹介欄があり、その一番下
のスペースには、なんとこんな注記が存在していました。

~本書新刊「謎の真相」は、2000年8月に廣済堂文庫として刊行
  された『歴史「謎」物語』を改題し、加筆・修正したものである~

出版では、改題・加筆・修正は、ままあることで、特段珍しいこと
でもありません。 

そこで、突如?浮上してきたその元本「歴史謎物語」新刊
「謎の真相」
を読み比べてみると、なるほど、章の順序が異なって
いる点と、前者の「・・・である」口調が、後者では「・・・です」に
変わっているくらいで、内容自体はほとんど同一です。
※手元の 「歴史謎物語」 は (2004年)平成16年11月25日 4刷

ところがダ、この元本「歴史謎物語」の方には、「あとがき」と
して、著者・井沢氏のこんな重要な説明が書き加えられていた
のです。
~この「歴史謎物語」に収めた文章は、私が十年以上に
  わたって、様々な雑誌に書きためたものである。
  いまにして思えば、考えが現在と違っている箇所もある。
  十年もたてば、人は新しい考え方に目覚める場合もある
  からだ。
  しかし、あえて訂正はせずに、興味のある方に読んでいただく
  ことにした。 とにかくここに収める文章の一つ一つは、私に
  とって原点であるからだ。 井沢元彦 ~


ごく簡単にいうなら、この元本「歴史謎物語」は、
~井沢氏が1990年以前から2000年頃までの間に書いた記事を
  集めたものであり、実際にはその後に考え方を変えた箇所も
  あったが、本書元本「歴史謎物語」はそこを修正していない~

こう通告?していることになります。

逆の言い方なら、新刊「謎の真相」は、元本「歴史謎物語」
内容を、その当時(2000年)のオリジナル?のまま継承させた
ものであり、しかも16年後の今年(2016年)になって、新しい書名
を冠して再登場させた本である。 こんな解釈になります。 
※要するに、本年2016年現在からすれば、内容自体は遥か四半世紀も
  昔の1990年以前から2000年頃までの間に書かれたものということに?


すると、新刊「謎の真相」だけの読者は、その後に著者が考え
方を変えた箇所を知らされないままに、十数年から二十数年も
前の主張を、著者の今現在の主張だと誤解して読んでいる
ことになるわけです。 
いささかエラそうな言い方になりますが、これでは読者への
対応があまりにも杜撰・不親切だと指摘せざるを得ません。

とにもかくにも新刊なのですから、仮にそうした箇所があった
としたなら、そこを新しい主張に書き改めるとか、それが
無理なら、せめて元本「歴史謎物語」のように、「まえがき」なり、
「あとがき」なりで、その旨の追記説明を加えておくことが、
読者に対する最低限必要な配慮だったように思えるからです。

この点をグズグズしていようものなら、そのうちに「逆説」シリーズ
新刊「謎の真相」の両方を読破するような、大層ヒマで熱心な
読者から、こんな批判・苦言が呈せられないとも限りません。
(もしそれが名古屋辺りの読者だったら、これくらい調子になるのか?)
~なんだとぉ? 両書の主張がまるきし食い違っとるがやッ!~

しかし、こうした混乱は(1)大層ヒマで熱心な読者にとっても、
(2)ごく並み並み?の読者にとっても、はたまた(3)著者・井沢
元彦氏にとっても、結局のところ、「三方一両損」?になるだけの
ような気がします。
そこで、この新刊「謎の真相」の不可解?がなるべく早く解消され
るよう、その願いを込めて、敢えて今回取り上げた次第です。

それはそれとして、この謎?をここまで解き明かしたワタシって、
ひょっとしたら「名探偵」ってことか? う~ん、自画自賛!


※追記  蛇足ですが、新刊「謎の真相」にはこんな文章ミスも。(320頁)
光圀は「生類憐みの令」が人間の尊厳を破壊する法であり、ただちに排され
るべきものであることは、光圀も十二分にわかっていたにちがいありません~



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---これまでの 「謎解き」 シリーズ----------------
334 日本史の「謎解き」23 戦国”戦死者”の弔い作法 供養もタダではできぬ
310 日本史の「謎解き」22 身近にあるぞ”性の讃歌” 大胆露骨こそ讃歌だ!
277 日本史の「謎解き」21 ピケティ風?の戦国経済論 格差はつきものだ!
265 日本史の「謎解き」20 ヤマトタケルは何故キレた? 現代と共有の話題
243 日本史の「謎解き」19 江戸版”速度”の単位って? 江戸人の速度意識
229 日本史の「謎解き」18 渡世人の生活費は? ハンパでないプロの厳しさ
214 日本史の「謎解き」17 異見はなぜ”申し訳ない”のか? 謙虚さも宗教?
204 日本史の「謎解き」16 ♪伸びた月代寂しく撫でて 月代は無用の長物?
195 日本史の「謎解き」15 何処が”皇”の住処? 韻が”現住所”を示す?
192 日本史の「謎解き」14 ”攘夷論”は科学なんですッ! 史実が事実だ!
182 日本史の「謎解き」13 伊達政宗の大胆と細心 遅れてきた男の正体とは
175 日本史の「謎解き」12 ピンハネ?は見ぬフリを 武士たる者の矜持だ!
146 日本史の「謎解き」11 “美容整形”は儒教違反ですか? なぜ盛んなの?
130 日本史の「謎解き」10 “外様”はなぜ石高が多い? 情勢は流動的!
123 日本史の「謎解き」09 “稲作”は尾張で終わり? 足止め150年の理由?
112 日本史の「謎解き」08 赤穂浪士のユニフォーム姿 何を着ていたのか?
106 日本史の「謎解き」07 “家”のない四人の将軍 なぜイレギュラーなの?
082 日本史の「謎解き」06 “米”はどこへ消えた? もし100人の村だったら?
063 日本史の「謎解き」05 賜姓のアリバイ 鎌足に賜姓はありえない!
058 日本史の「謎解き」04 三種神器と象徴 なぜ、鏡・玉・剣なのか?
057 日本史の「謎解き」03 鏡じかけの舞台 “能面”パワーの秘密とは?
049 日本史の「謎解き」02 綱吉の可視政策 法律は罰するためではない!
039 日本史の「謎解き」01 信長の財テク 天才はどこで商売を覚えたのか?
-------------------------------
ヤジ馬の日本史~超駄級・200記事一覧~ 前編「あ→と」巻 七転び八起き!
ヤジ馬の日本史~超駄級・200記事一覧~ 後編「な→ん」巻 あゝ七転八倒!
ヤジ馬の日本史~超駄級・300記事一覧~ №202-209編 堂々肩すか史!
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この記事へのコメント

古代子孫
2016年02月23日 16:30
井沢氏の日本史本はとても面白い。ただ、以前、赤穂事件の調べをしている時、中央義士会という赤穂浪士関係を研究されている方たちが実証?証拠?推測?などをあげて井沢氏の赤穂事件論に徹底反論していました。会の方が指摘している箇所は確かに会の方の勝ちのような気がしました。他は分かりません。井沢氏はなかなか視点よくさまざまに歴史を読んでいると思われますが、どうなのでしょう?なにせいまだになぞの多いとされる日本史、その中の赤穂事件、あまり時の政権にとって大したことではないので?単に傷害事件と処理されたことだったのではないでしょうか。重大な儀式の時だったのが目立っただけだったようにも思えます。何があっても吉良様は足利(源氏)の四位少将様、五位の諸大夫では歯向かうのはどうなのでしょう。どちらが贔屓というわけではありませんが、浅野様は2度目のお役目なので?不思議です。中央義士会の方には怒られそうですね。少し井沢氏の本を読んでみます。
2016年02月23日 18:06
コメントを頂き、ありがとうございます。
井沢元彦氏は~「逆説の日本史14」文治政治と忠臣蔵の謎~で、
この「赤穂事件」にも触れています。
その中での主張は概ねこんな具合です。
○ドラマ「忠臣蔵」と、史実「赤穂事件」はまったく別物であるが、
大方はこれをゴッチャに受け止めているフシがある。
なぜなら・・・
後は、ご自身で読んで頂くとして、私自身は結構
納得してしまいました。
また、この中で井沢説には多くの批判が寄せられたことも
述べています。
おっしゃるように、日本史には確かに未だ謎が多いからこそ、惹かれるのかもしれません。
今後とも、よろしくどうぞ。
へたれ貴族
2016年02月26日 00:50
この考察は大変ありがたかったです。
私は「逆説の~」をはじめ井沢さんの本は片っ端から読んでる暇人です(笑)。綱吉公のところで、頭の中が⁇になり、ネットで“綱吉 井沢元彦”で検索をしていまいました。
なるほど、そういうことなんですね~って、合点がいきました。
同じように感じてくれている人がいて、良かったです!
2016年02月26日 18:06
コメントありがとうございました。

~私は「逆説の~」をはじめ井沢さんの本は
 片っ端から読んでる暇人です(笑)~との
紹介がありましたので、その点は私・住兵衛
の同業者?と言えそうで心強い限りです。

今回の新刊「謎の真相」については、おそ
らく「逆説の~」読者の多くか疑問を持つで
あろう、悪い?予感がしましたので、今回
記事にしたものです。
それが「へたれ貴族」さんの頭の中の整理
にも多少はお役に立てたとしたなら、
ちょっとばかり嬉しい気分です。

今後ともどうぞよろしくお願いします。
ゆきずりさん
2017年04月11日 13:07
週刊ポスト誌掲載の「逆説の日本史」でも、明治維新編が終わった後に「連載中と現在では考え方が変わった箇所」のおさらいをしていましたね。
サイト主さんのおっしゃる通り、以前の著書の再刊や古い論文の掲載なんかはきちんと断ってもらわないと読者を混乱させることになるのでたいへん困ります。
2017年04月12日 09:37
>ゆきずりさんへ
コメントをありがとうございます。
実は本年2017年3月に買った井沢元彦著
「学校では教えてくれない日本史の授業/
書状の内幕」もその通りで、中身は2000年
3月に刊行された廣済堂文庫「歴史if物語」が
加筆・再編集されたものでした。あっちゃー!
こんなことなら別の本を買えばよかった。
今後とも弊ブログのご贔屓をよろしくお願い
いたします。

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