日本史の「世界標準」04 神君孫の歴史書

なにしろ1657年に着手し、完成したのが二十世紀に入った
1906年(明治39年)のことですから、その間なんと250年!
ウムム! やはり、この徳川(水戸)光圀の「大日本史」は
「大事業」と言っていいのでしょう。
ところで、なんでもまたこんな途方もないことを始めたの?

動機についてはいろいろ言われていますが、そのひとつに
当時なりの「世界標準意識」があったものと想像されます。
もちろん当時の日本にとっての「世界標準」とは隣国・中国の
「中華思想」であり「儒教」でした。

ところが、その本家?中国ではこの少し前に「「明」が滅んで
「清」に変わるという激動を体験しています。
すなわち、誇り(埃ではない!)高き世界に冠たる漢民族が、
こともあろうに周辺野蛮人に過ぎない満州民族にやられちゃう
なんてこと・・・つまり「中華思想」からすれば「あり得ないこと」
が起こってしまった時期なのです。

このシビアな現実を「半中華思想・半儒教」感覚の持主である
「日本」はどう見たのでしょう?
多分この位のことは思ったのかも。

~なんだヨ、今まで偉そうなことを言っていたけど、野蛮人に
滅ぼされてしまうなんて、結局のところ中途半端なマガイモノに
過ぎなかったんだ。 その点からすれば、そういうことのない
わが国こそが正真正銘のホンマモンなのだ~

そう、今まで幾分かは感じていた「中国本家・日本分家」の意識
がガラッと転換したことになります。
だって、「本家」がなくなってしまった以上、「世界標準」すなわち
正しい「中華思想・儒教」を伝えられるのは自分達をおいて
他にはない、ということになりますヨ、これは。

今回のアクシデント(明が滅び清が興る)によって、この「人類の
英知」が後世に正しく伝わらないとしたら、これこそ由々しき
事態である。 危機だ!ピンチだ!絶体絶命だ!
こういう時こそ「ニュー本家」である我らが頑ばらなくっちゃ!

それには、まず他国からマガイモノと誤解されるようなことが
あってはならない。

だとしたら、滅び去ったマガイモノの旧本家とは異なり、革命の
洗礼も受けずに、ず~っと万世一系の天子様をいただいておる
事実をきっちり強調した上で、国家としての「履歴書」もきちんと
整備し、「ニュー本家」にふさわしい由緒正しい民族である旨を
シッカリ表明しておくべきであろうヨ! その結果・・・

~さあ、始めよう!日本の歴史書づくり!~という運びになった
のでは? 
とにかく、新しく我こそが「グローバル・スタンダード」になろうと
いうのですから気合が入らないワケがない!

画像 この光圀の「歴史編纂」は、
 40年ほど(光圀存命中)で一旦
 はほぼ完成させたようですが、
 「まだまだ足りないッ!」という
 人もいて、最終的には全397巻
 226冊(目録5巻)の形に。
 出展:常盤神社 水戸黄門 ホームページ

そもそも光圀は、この作業に何を求めていたのでしょうか?
日本へ亡命してきた明朝遺臣の儒学者・朱舜水を招聘している
ことからしても、儒学史観のレベルアップを目論んだのは事実で
しょう。

ちなみに、それまで逆賊の評価を受けていた「楠木正成」が、一転
「忠臣」としてイメージ・チェンジされたのもこの儒学者・朱舜水の
影響が大きかったとされています。
さて、この学習の結果がこんな言葉になって現れます。

「徳川本家は親戚頭に過ぎず、真の主君は天子様である」
つまり、徳川の御三家(水戸家)の当主本人がこう言っていること
になります。 「わが国の正当な統治者は朝廷(天皇家)であり、
断じて徳川家ではありゃ~せんゾ!」 

まあ、多少は「ニュー本家」になることへの気負いがあったのかも
知れませんが、それにしても徳川家内部の人間の発言としては
結構強烈で過激ではありませんか。

この思想が幕末の統幕運動の思想・行動に「正当性」、すなわち
「幕府を倒してなにが悪い!」の考え方をもたらすことになります。

そもそも、家康が幕府の学問として儒学を取り入れた目的は
各藩に対して「幕府に逆らうことは絶対に正しくない」とする意識を
徹底させるためだったのですから、「孫・光圀」によってまったく
正反対の思想に作りかえられてしまったことになります。

とすれば、信じられないほど裏目に出たことになり、家康にとって
光圀は「不肖の孫」だったのかも知れません。

実際のところ、幕府自身は「先端科学である儒学」と認識していた
ようですが、この点ははやり「宗教である儒教」という理解の方が
正しかったのかもしれません。
科学というよりは宗教だった・・・20世紀の「共産思想」もその通り
だったことを少し年配の方なら記憶されているのでは?

儒教に限らず病気や飢饉や災害についての昔の人の対応ぶり
を見て、現代人は「迷信に振り回されていたナ、アハハ・・・」と
ばかりの感想を抱きやすいのですが、ドッコイ!ちょい待ち!

対象が少し違っていただけのことで、「迷信に振り回される」という
点では昔の人も現代人も、実は負けず劣らずの五十歩百歩、
すなわち「実力伯仲」と言えるのかもしれませんゾ。


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~日本史の「世界標準」03 楕円形の非常識~ なんでまた楕円形なんぞに?
~日本史の「世界標準」02 識字のお膳立て~ 世界に誇れる高識字率!
~日本史の「世界標準」01 神様のご意志~ 我は神に選ばれし将軍である!
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  • 日本史の「世界標準」11 悪口に留まり粛清に至らず

    Excerpt: 江戸幕府は、良くも悪くもいわゆる「農業重視」を基本政策とした 政権でした。 その証拠に、「商業重視」の姿勢を見せた田沼意次は、道半ばで 失脚し、しかもその後、こともあろうに”ワイロ政治家”などと.. Weblog: ヤジ馬の日本史 racked: 2014-01-19 17:03
  • 日本史の「世界標準」07 オンリーワンと八百万

    Excerpt: ユ) 神は宇宙にオンリーワンの存在だと昔の昔から決まって    おるわいな! 日) そんなぁ、ウチの場合は少なく見積もっても神様だけでも    八百万、仏様も加えたらさらに増えますが・・・ Weblog: ヤジ馬の日本史 racked: 2014-01-19 17:05