~小銭の落し物~

戦後生まれの日本人にとってはほとんど無名と言っていい
存在だが、それ以前の日本人にはよく知られた人物である。
その名を「青砥藤綱(あおと ふじつな)」と言う。 とは言い
ながら、シッカリ戦後生まれの私だから、彼の「有名全盛期」を
知っているわけではない。
伯父宅で藤綱が描かれた「掛軸」を見たことが、ひょっこりこの
名を思い出すきっかけになった。

彼を有名にしたのは次のエピソードである。
※もちろん上記の「掛軸」のモチーフもこれである。

夜間通りかかった川で、青砥藤綱は誤って小銭を落してしまった。
暗い川面では探しようもない。 そこで、藤綱はどうしたのか。

実は、落した小銭の何倍もする金額の松明を従者に買いに
やらせ、その松明の明りを頼りに、暗い川の中を探させた
のである。 現代の感覚なら、落した百円玉を探すために、
わざわざ千円の懐中電灯を購入したというところか。
誰が考えても勘定が合わない行動である。

当時の人も同じ感想を持ったようで、その理由を訊ねたところ
藤綱はこう答えたと言う。
「確かに松明代は自分の損にはなるが、その銭は巡って社会の
お役に立つだろう。しかし、探さなかったとすれば小銭と言えども
永久に社会のお役に立てないではないか」

このことでなにが言いたいのかと想像するに、つまりは「私より
公の方が大切である」と言っているようにも聞こえるのである。
もし、そう意図が含まれているエピソードだとしたら、戦後なって
次第に青砥藤綱の名前が忘れられていった理由もよく分かる
気がする。 ちなみに、藤綱は鎌倉時代に実在した人物である。

でも、千円を落したから百円ライターを買って探しました、という
お話の場合には、決して「掛軸」のモチーフには取り上げて貰え
ないと思うので、くれぐれもご留意くださいね。

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