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zoom RSS 日本史の「発明発見」19 エリートは風船?を背負う

<<   作成日時 : 2018/01/25 00:01   >>

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「馬廻(うままわり)」とは、概ねこんな説明になっています。
〜武家の職制のひとつで、大将の馬の廻りに付き添って護衛・伝令・
  決戦兵力として働くエリートであり親衛隊的な存在〜

武家の職制として確立されたのは、どうやら戦国時代も後半に差し掛かった
時期だったようです。

織田信長(1534-1582年)は、そうした馬廻衆などの精鋭を赤・黒二色の
「母衣衆(ほろしゅう)」として抜擢し、その中でもとりわけ優秀な者については、
部隊の指揮官にまで昇進させました。
信長家臣時代の若き前田利家(1539?-1599年)は、この「赤母衣衆」の
筆頭に抜擢されたとされたほどに優秀な者だったようですが、さて困った
ことに、筆者にはこの「母衣衆」って人たちのイメージが浮かんでこない。

そこで、面倒臭いのを押し殺して仕方なく探ってみると、
〜母衣(ほろ)とは、矢や石などから防御するための甲冑の補助武具で、
  兜や鎧の背に巾広の絹布をつけて風で膨らませるもの〜

なんのこっちゃ、この説明ではますます分からんではないかッ!

しばし固まってしまった後、
〜なになに、「背に巾広の絹布をつけて風で膨らませるもの」ってか?
  ・・・待て待て、何やらドラマでも見たことがあるような気がしてきたゾ〜

そこでハタと思い当たったのが大河ドラマ「真田丸」(2016年)でした。
〜おぉそうだ! 合戦の折に真田幸村が背負っていた風船もどきのアレでは
  ないのかナ?〜
 どうやらイイセンまでたどり着いたようです。

〜矢や石などから防御するために背に付けた絹布風船〜って、はやりこれを
示しているようでした。 (参照:下写真)
「母衣」自体は、竹で編んだ籠を骨格にして、それに大きな布を被せた構造で
全体は球状になっています。

でも「真田丸」の時は赤や黒ではなく、確か黄色だったと思ったけど?
だったら、「黄母衣衆」って者も存在していたのか?
面倒くさいけど、またもや追跡開始。

〜信長が採用した赤・黒に倣い、豊臣秀吉(1537-1598年)が自らの馬廻から
  「黄母衣衆」を選抜した〜
とあります。
青とか緑ではなく「黄色」にしたところが、さすがに派手好きな秀吉らしさ
ですが、ところがその「黄母衣衆」の名簿に、真田幸村(信繁)なる名は
挙げられていないようです。

ですから、真田幸村が黄母衣衆の一員であったことの確証はないわけで、
ひょっとしたら、ドラマ向けのフィクション(創作)ということかもしれません。
それはさておき、ではその「母衣」(ほろ/ボロではない!)がどういう方法で
〜矢や石などから防御〜したのか? 
この点もイマイチ分かりづらいところがあります。

大きさや形状などはそれなりの変遷を経たものの、「母衣」と呼ばれる物
自体は、どうやら古代からあったようで、風をはらんで膨らむことで、
後方からの弓矢や石を防ぐことが、その主な使用目的とされています。
さらには、前方に対してもこれを頭から被ることで弓矢を防いだとする説も
あるようです。

古代から中世までの長らくの間、日本では弓を主武器とする戦闘法が
用いられていました。
こうした環境で、隙間の多い大鎧を着用し馬を駆る武士の戦闘スタイルの
弱点はその隙間にあります。
〜隙間が弱点なら、兜との隙間なしの一体型大鎧にすればよかった
  じゃん〜
ってか?

人間には「首」という関節があって、その部分をフリーにしておくからこそ
頭部を自在に動かせるのです。
そんな部分を「頭+胴の一体型防護武具」なんかでガードしてごらんなさい。
首を動かすこともできず、ほとんど「案山子(かかし)」状態ですよ・・・敏捷な
動作を必要とする戦場に適した武具だとはとても思えません。

お話が逸れましたが、ともかく、いかに剛の者とはいえ、その隙間に飛んで
来た矢は避けようがないわけですから、その弱点を補う意味でこの「母衣」は
その性能要求にばっちりフィットした「万能護身布」だったことになります。
ですから、後の時代には武士の「七つ道具」の一つに挙げられるまでに
出世?しました。

しかし、弓矢よりもはるかに強力な武器「鉄砲」が、戦場武器の主役として、
登場するようになると、せっかくの「母衣」も「万能防護布」としての性能を
発揮できなくなります。
鉄砲から発射された弾丸は、布製の「母衣」なんぞはワケなく貫通して
しまうからです。
では、「母衣」を無用の長物として見向きもされなくなったのか?

これが実際には「さにあらず!」で、今度は戦場での「指物」の一種として
用途変更?されています。
「(旗)指物」とは、背中に刺した小旗・飾り物の類ですが、所属や任務を
示すために戦場で用いられましたが、ここに「母衣」も加わったわけで、
いわばニュー・タイプ「風船型の(旗)指物」といったところだったのでしょう。

そこで、現代人にはこんな疑問が浮かんできます。
合戦現場で、こんなデカい「背中風船」をわが身に着けていたら、動作も
不自由になるだろうし、却って敏捷な行動を妨げてしまうのではないか? 
はたまた、合戦中の気象によっては強風に煽られての落馬という失態を
演じる心配もありゃせんのか?

母衣衆真田丸62 前田利家母衣衆51













大河ドラマ「真田丸」の母衣衆姿/母衣衆姿の前田利家像

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常識的には、こうした「母衣」による戦場での「労災事故」?がゼロだったとは
思えません。 しかし、先の説明のように、
〜大将の馬の廻りに付き添って護衛・ 伝令・決戦兵力として働くエリートで
  あり親衛隊的な存在〜

であるわけですから、実際使う側も「多少の不便よりは名誉を優先」ほどに
受け止めていたものと想像されます。
なにせエリートであることの「身分証明書」?でもあるわけですからネ。

では、合戦らしい合戦が姿を消してしまった江戸時代には、この「母衣」は
どうなっていたものか?
どうやら、次第にその姿を消していったようです。
活躍の場である「合戦」そのものが無くなってしまったのですから、無理も
ありません。

とはいうものの、戦国時代の武将の血を引く藩では、この伝統ある
「母衣衆」を遺したところもあったそうで、例えば、築城名人としてその名を
挙げられる藤堂高虎(1556-1630年)が興した「藤堂家」や、
「遅れてきた英雄」と称された伊達政宗(1567-1636年)を出した「伊達家」が
そうでした。

もっとも、当然のことながら、これは戦場での活躍を期待したものではなく、
側近を意味する名誉職として置いたものでした。
ですから、言葉を替えれば、「母衣」を着用しないニュータイプ「母衣衆」と
いうことになります。

〜今まであったものが姿を消してしまうのは寂しい〜
こうした昔を懐かしむ感情は古今東西あまり変わるものではありません。
そうした意識から、「祭り」の出し物?として登場させるところもありました。
先の前田利家のお膝元・金沢がその一つで、毎年開催される
「金沢百万石まつり」には「百万石行列」なるパレードがあって、
その中には馬に乗った「赤母衣衆」の姿もあるそうです。

また、同じく金沢市内の「尾山神社」には、その「赤母衣衆」時代の
前田利家像が建立されています。
ということは、金沢あたりでは「母衣衆」は現在でも割合によく知られている
存在なのかもしれません。

これも余談ですが、Wikipediaによれば、イギリスのTV番組
「Ancient Discoveries」※1)の中に、わざわざこの「母衣」を取り上げて
その効果について検証した「Ancient Special Forces」※2)の回
(2009・12放送)があったそうです。
詳しい番組内容は承知しないものの、ということは、この「護身用ツール」は
やはり科学的にもそれなりの合理性を「発明品」だったのでしょう。
※1)「古代の発見」 ※2)「古代の特殊部隊」ほどの意味?

海外さえ注目した日本古来からの「護身ツール」を、日本人でありながら
全く承知していなかった筆者なぞは、さしずめ「世間知らずでウブなヤツ」と
いったところでしょうか。 エヘヘ、まったくもって面目ないッ!



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