日本史の「女性」27 皇統維持は超ウラ技で

「先代の憲法」という表現が妥当なのかはよく分かりませんが、ともかく
昭和時代の終戦時まで用いられていたのが「大日本帝国憲法」(1889年)
でした。 そして、その第一条はこう記してありました。
~大日本帝国は万世一系の天皇之を統治す~

つまり、天皇が統治する国家であると標榜し、しかも念入りに、その天皇に
ついては、「万世一系の」と注記されていたびです。
では、その「万世一系」とは、~永久に一つの系統が続くこと。 
多くは皇室・皇統(天皇の血筋)についていう~


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  第14代・仲哀天皇 / 神功皇后
 
ですから、簡単に言えばこういうことになりそうです。
~(大日本帝国憲法下における)天皇は、「神の代」の祖先たちの系譜を
 引き継いだ「万世一系」の存在である~
 言葉を換えれば、
~(天皇の血統は)初代・神武天皇以来、断絶することなくずっと継承され
 続けている~


でも、このように「完全無欠な万世一系」とする主張とは、やや裏腹に感じ
られるお話がまったくないというわけでもありません。
たとえば、第14代・仲哀天皇に関わるエピソードがそれに当たります。
仲哀天皇と神功皇后の夫妻と、さらに最高重臣(現在でいう総理大臣?)
の立場にあった武内宿禰、当時の三巨頭いうべき方々が一堂に会し、
今後の国家方針についての会議を行った際の出来事です。

多少込み入ったお話ですから、前もってその三巨頭についても触れておくと、
まず仲哀天皇はこうなります。
その出自といえば、驚くなかれ、なんとあの超有名な英雄・日本武尊
(ヤマトタケル)の第2子なのです。
父・日本武尊は天皇になることはありませんでしたが、その子である仲哀は
歴代天皇に名を連ねています。

その仲哀の奥様である神功皇后(じんぐうこうごう)も、この後において
超ウラ技を披露することになります。
具体的な経緯は後に述べるとして、その超人ぶりもまた天皇家がモットーと
する「万世一系」を強く意識したものになっているのです。

そして三人目が武内宿禰。
この方の何が凄いって、まずは半端でないその長寿ぶりです。
なにせ二百数十年もの間、重臣であり続けたばかりか、寿命の方も優に
三百歳超えだったそうですからハンパではありません。
百歳超えの高齢者の数が8万人を超えたと報告された現代令和日本でも、
三百歳超えの方にはそうそうお目にかかれるものではありませんからねぇ。

さて、この仲哀の時代には、父・日本武尊が一度は屈服させた熊襲が再び勢い
を盛り返していました。
そこで、熊襲再征伐のために、仲哀天皇は敵本拠地である筑紫国に入り、
神功皇后、武内宿禰による三巨頭会議に臨んだわけです。

会議とはいうものの、その方法は現代とは大きく異なっています。
「神懸り」によって「神託」を得、それに沿って行動を取るのです。
ああじゃこうじゃと人間同士が、時間をかけた話し合いで結論を出そうとする
ことよりは断然手っ取り早い方法と言えるのかもしれません。
この折には、神功皇后が「神懸り」を行いました。

えぇ、神功皇后に憑依した神が、神功皇后を通じてあれこれ意見や指示など、
つまり「神託」を伝えるわけです。 
このときの神託は、このような内容でした。
神託~今は熊襲なんぞに関わっているよりも、宝がドッチャリある海の
   向こうを目指すべきである~

しかし、仲哀天皇はその神託に疑問を呈しました。
仲哀~はて、海の向こうを眺めてみたものの、そんな宝の地は影も形も
   ありゃせんぞ。 ひょっとして、いい加減なヨタ話ではないのか~
せっかく得た「神託」に疑念を挟んだのですから、神功皇后も武内宿禰も、
ちょっとばかりハッとしたかもしれません。

宿禰~あらま、それはあまりに大胆なご感想でありご発言ですねぇ。
   だったら、念のため今一度神意をお尋ねすることしましょう~
そこで、再び部屋を暗くし、神を呼び出すために仲哀天皇が琴を奏で始める
ことで、神功皇后が神懸りを再開。


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   第15代・応神天皇 / 武内宿禰
 
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すると、間もなくその琴の音が途絶えてしまったのです。
不審に感じた皇后と宿禰が、灯りを点けてみると、仲哀天皇は既に息絶えて
いました。
こうした展開は普通には、神託に疑念を呈した仲哀天皇に対して、怒りを
覚えた神が罰を下したという解釈になります。
案外に気が短くキレやすい神だったのかもしれません。

この後の神功皇后が、神託に沿って海の向こうを目指したのは当然です。
宝がドッチャリあると神もおっしゃったことだし、仲哀天皇という反対意見も
なくなったのですからねぇ。 
ところが、当時の神功皇后が妊娠していたことが問題でした。
出産予定日間近で海を渡ることになったからです。

しかし、敵地遠征戦の最中に出産というのもあまり芳しいことではありません。
そこで神功皇后は、その戦にメドが付くまで出産を遅らせることにしました。
どうやって? えぇ、お腹に石を巻き付けて冷やしたと主張されています。
そういう幾分ワケありの状況、つまり「妊娠期間15ケ月」を経て誕生したと
されているのが第15代・応神天皇です。

第15代・応神天皇の父親は間違いなく第14代・仲哀天皇である。
こうした「万世一系」を主張するためには、つまり神功皇后の妊娠は
何が何でも仲哀天皇が生きているうちのことでなければなりません。 
しかし、その計算に立つなら、この時期の出産ということではいかにも
妊娠期間が長すぎることになります。

そこで持ち出されたのが「妊娠期間15ケ月」という超ウラ技というわけです。
ですから、現実的な解釈を持ち出すなら、仲哀天の死によって「万世一系」は
断絶したのかもしれない、とするのが常識的でしょう。
もう少しクドイ説明なら、これまで続いてきた「仲哀王朝」はこの時点で滅び、
新たに「応神王朝」が始まったのかもしれないということです。

このことには、傍証らしき事柄をいくつか挙げることができます。
まず、「仲哀」という諡号です。
諡号というのは高貴な方々に付けられる、一般人でいう「戒名」みたいなもの
で、多くの場合は本人の生き様・特性・嗜好などを考慮して本人以外の人物が
決定し、本人の死後に贈られます。

その肝心な諡号に、前例がない何やら物悲しさを感じさせる「哀」の文字が
入っていることを思えば、この天皇でその血統が途絶えたと受け止めても、
それほどに強引な解釈でもないように思われます。

また、生まれた天皇の諡号「応神」も結構意味深です。
というのは、初代・神武天皇と第10代・崇神天皇と御二方の天皇の諡名に
使われている「神」という文字は、王朝創業者?を表しているようなのです。

初代・神武はともかくとして、代数からいっても第10代・崇神は歴代途中の
天皇であるからして、とても王朝創業者?とは言えないではないか。
こんなクレームが出るかもしれませんが、実は初代・神武と10代・崇神は
同一人物と考えられているのです。

えぇ、「欠史八代」という用語も、それを意味していると受け止めていい
のでしょう。
要するに、初代・神武の次代(第2代)・綏靖から、第10代崇神の
先代(第9代)・開化までの、その間八人の天皇は実在しなかった可能性が
高いとしているわけです。

それに、その応神天皇を生んだ神功皇后にも「神」の字が付けられています。
文字通り「神のような功績を為した皇后」という意味を持たせた諡名で
しょうから、最大級の評価だと言えます。

では、その「神功」とは海の向こうまで出かけ、大勝利をもたらしたこと
でしょうか。 もちろんそのように見る向きも少なくないようです。
しかし、そのことよりもむしろ「新王朝の祖」をこの世に産み落とした、
まさにそのことが「神もどきの功績」だったと解釈したほうが、もっと素直な
受け止めになるような気もするところです。

ということで、明治時代になってもウリにしていた「万世一系」という看板
には、遠く神功皇后の「妊娠15ケ月」という超ウラ技による貢献が小さくない
ように感じられるわけです。
とはいうものの、この「妊娠15ケ月」を素直に信じないヘソ曲がりチックな方も
少なからずおられましょう。

その折には、ご面倒をおかけしますが、源義経(1159-1189年)の郎党・
武蔵坊弁慶(生年不明-1189年)の生い立ちを思い出してください。
~(弁慶は)母の胎内に18ケ月いた~とされているのですねぇ、これが。




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