日本史の「信仰」19 コロナ禍の蘇民将来子孫之家

コロナ禍ということもあって、新規感染者数、予防対策、あるいはワクチン
接種など、毎日のニュースでもそれ系の話題が数多く取り上げられています。
その中には、ひょっこりこんな出来事も混じっていました。

~新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)の通知不具合~
要するに、本来伝達されるべきアプリ利用者との接触通知(Androidスマホ)が、
昨年(2020)9月末以降、うまく伝達できていなかったとのことです。
平時では使いこなせないほどの機能を誇るスマホも、有事においては、
てんでの為体ぶりを披露したことになります。


 cocoa_01.jpg COCOA

またこれとは別に、1瓶で6回分の量とされていたワクチンが、日本の場合
だと5回しか接種ができないことも伝えられました。
注射器の形式の違いによって、ワクチンの幾分か(つまり、1/6の量)を有効に
使い切ることができず、結果としてその分については廃棄と同じ扱いになって
しまうとの説明です。

平時においては世界でも最先端クラスと目されていたはずの医療技術の面でも、
有事の環境においては、スマホ同様の「あっちゃー!」ぶりを演じたことに
なります。

さて、そうしたことはさておくとして、筆者の生息するエリアの地元新聞
(中日新聞・朝刊 2021/ 2/10水曜)には、コロナ絡みのこんな話題が掲載
されました。

見出しは、~御朱印でコロナ封じ 「蘇民将来子孫之家」~
パッと文字を追っただけでは、言葉自体もさりながら、その意味すら筆者には
よく理解できませんでした。

そこでもう少し読み進んでみると、要するに、地元の神社サンが、今月(2月)
の御朱印を疫病よけの護符にちなんだデザインにしたという紹介です。 
コロナ収束の願いを込めてのアイデアからです。
そして、その疫病よけの護符というのが、見出しになっている
「蘇民将来(そみんしょうらい)子孫之家」ということです。

特別な気負いもなく、ごくごく普通の新聞見出しとして収まっているのです
から、言い方を換えれば、この程度のことは一般人の常識の範疇にあるもの
と判断されたのでしょう。 

ところがギッチョン! 世の中には、それが分からない奴もいた!
えぇ、威張るつもりはありませんが、もちろん筆者のことです。
筆者はその「蘇民将来子孫之家」という言葉も、またその意味も、ましてや、
それに関する説話も、そうした一切をとんと知らなかったのです。
~筆者の常識は世間の非常識~ 実際これは不都合な真実です。

そこで、まずその新聞記事にあるその説話に目を通すことに。
~蘇民将来は、奈良時代に編さんされた備後の国の風土記に登場する
 説話の人物~
とされています。 
でも、備後の国って、どこだっけ?
あぁ、備前、備中、備後だから、現在なら広島県の東半分といったところか。

続いて、
~須佐之命(すさのおのみこと)が旅先で宿を求めたところ、裕福な
 巨旦(こたん)将来は断ったものの、兄弟の蘇民将来は貧しいながらも
 粟飯を用意するなど、できる限りのもてなしをした~


えぇッ、須佐之命ってどなたでしたっけ?
~天照大神の弟であり、多くの乱暴を行ったため、高天原から追放された。
 出雲に降り、八岐大蛇(やまたのおろち)を退治し、奇稲田姫(くしなだひめ)
 を救い、大蛇の尾から得た天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)を
 天照大神に献じた~

こんなエピソードが語られているのですから、なかなかに元気のよい神サマ
だったようです。

また、巨旦将来と蘇民将来は兄弟とされていますから、これは両者ともに
名前が四文字ということなのでしょう。
下の二文字「将来」が共通しているからといって、これを姓だと捉えたら、
西洋風な「名+姓」の順になってしまい、日本の説話というにはいささかの
違和感が伴います。

さて、その蘇民将来のもてなしに対し、
~須佐之命はお礼に小さな茅(ち)の輪を渡し、
 「後世に疫病が流行することがあれば、子孫だと言って茅の輪を腰に
  着ければ逃れられる」と約束した、とされる~


 somin_syourai_huda_01.jpg chinowa_kuguri_family_01.jpg
 御札・蘇民将来子孫之家 / 茅の輪くぐり(神社) 

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現在のコロナ禍も、その「後世に疫病が流行する(とき)」という条件に
ビッタシ当てはまっているような気がします。
そういうことなら、須佐之命の言葉に従って現代人も「茅の輪を腰に着ける」
ことが重要になっている印象になります。

さらに続いて新聞記事は、
~全国各地の神社で毎年六月ごろに行われる「茅の輪くぐり」の由来にも
 なっている~

こうなると、護符「蘇民将来子孫之家」や、あるいは「茅の輪(くぐり)」について
もう少し探ってみなければなりませぬ。 が、正直言ってちょっと億劫感も。

そうした億劫感の中でこんな説明を見つけました。
~蘇民将来とは日本各地に伝わる説話、およびそれを起源とする民間信仰
 である。
 こんにちでも「蘇民将来」と記した護符は、日本各地の国津神系の神
 (おもにスサノオ)を祀る神社で授与されており、災厄を払い、疫病を
 除いて、福を招く神として信仰される。
 また、除災のため、住居の門口に「蘇民将来子孫」と書いた札を貼っている
 家も少なくない~


へえ、とんと知らなかったなあ。
しかし、これで「蘇民将来子孫之家」については、一応のイメージを整える
ことができました。

さて、これは蛇足になりますが、日本の神様には二系あるとされて、一つには
高天原にいる「天津神」系、そしてもう一つが高天原から地上(葦原中国)に
天降った「国津神」系。
ですから、「出雲に降った」とされている須佐之命は「国津神」系に所属と
なるようです。

さて、ここまで整理ができれば、次には「茅の輪(くぐり)」を残すだけです。
しかしまあ、「腰に着けた茅の輪」ということなら、そんなサイズの輪を人間が
くぐるのさすがに難しいだろうと見当をつけると、これがバッチシ正解。
そんなに小さなものではありゃあしなかったのです。

要するに、こんな説明です。
~神社境内にセッティングされた、人間が通れるくらいにデッカイ茅(かや)の輪
 を老若男女がくぐり通ることで、心身を清め、無病息災や厄除け、家内安全
 を願う行事~

この説明を信用するなら、茅の輪くぐりもマスク着用や手洗い励行などと
同様に、コロナ感染防止の有効な対策になろうというものです。

しかし、折角の「茅の輪くぐり」であっても、そこへ大勢が押し寄せて
しまったら、今度は「三密」が避けられなくなり、これは歓迎できません。
そこで、冒頭の新聞見出しに戻り
~御朱印でコロナ封じ 「蘇民将来子孫之家」~です。

そうした流れを踏まえた上で、今ここで筆者から全国の「国津神系」神社へ
向けての御提案です。
まず、護符の「蘇民将来子孫之家」の文字を入れたスタンプを作ります。
それを御朱印の代わりに、参拝者のマスクに押す。

そうすることで、参拝者は災厄を払い、疫病を除いて、福を招くことができる
はずですし、神社としても「茅の輪くくり」ほどに大仕掛けな装置を準備する
必要もなくなるばかりか、境内に大勢が集まって密を作ることもなくなること
まで考えれば、すっごく名案だと思うのですが。

えぇ、感染予防対策として現在挙げられている外出控え/三密(集・接・閉)回避/
換気/咳エチケット/手洗い/に加え、さらに強力な八番目の対策として、
新しく「御朱印マスク」を仲間入りさせるということです。


corona_virus_01.jpg



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