日本史の「ライバル」04 神々の悠久なるリベンジ

列島民僕にとってはまったく目新しい宗教と言っていい「仏教」が、
百済王からこの地に伝えられた(公伝)のは548年のこととされています。
これが正しければ、我が国においては第29代・欽明天皇(509?-571年)の
時代ということになりますが、もっともその時期については他にも
538年説、552年説など諸説あって、実際のところはイマイチよく分かって
いません。

ともかく、国家間の公式ルートを経て仏教が伝わったのはこの頃の出来事と
踏んでもさほどの見当違いではなさそうですが、民間レベルの非公式
ルートということなら、おそらくはこれよりもっと早い時期のことだったに
違いありません。

少しづつ浸透し始めた仏教。 このことに対する反応は政界有力者の中
でも大きく分かれました。
~仏教を気持ちよく受け入れるべきか、または遠ざけたままにしておく
 べきか~

まったくの「未知との遭遇」ですから、態度が一本化しなかったとしても
無理はありません。

そうした中で、受け入れに賛成する側の代表的な人物、それが蘇我馬子
(551-626年)でした。
~仏様という異国の神は、我が国にも民にも最先端の文化をもたらすので
 あるからして、これをシカトするなんてのは、いかにもモッタイナイ!~

 
この意見に反対する側の代表的な人物が物部守屋(不詳-587年)でした。
~すでにおられる我が国の神様をさしおいて、わがわざ異国の神(仏様)
 を崇めようなんて、とんでもハップン、ナンセンス!~


意見は平行線のまま話し合いでは埒が明かず、ついには武力衝突にまで
発展せざるを得ませんでした。
「丁未(ていび)の乱(変/役)」(.587年)と呼ばれるこの内乱は、
別に「物部守屋の変」、あるいは仏様を認めるは認めないかの衝突と
いう意味から、「崇仏(排仏)戦争」とも呼ばれています。

守屋率いる物部氏は、この戦争でボコボコの惨敗を喫し、危うく滅亡に至る
ほどの大ダメージを受けました。
「仏様なんぞ要らん」と主張した物部氏が負けちゃったわけですから、
これ当事者?である神様仏様の立場から眺めると、「神様は仏様に負けた」
ということになります。
対戦成績で示すなら、「神様1敗/仏様1勝」といったところです。

しかし、勝者・仏様が敗者・神様を滅ぼしてしまうことはありませんでした。
まあこのあたりは、我が民族が昔の昔から備えている特有の
~ボコボコに叩き潰して滅ぼしてしまっては、恨みも積り祟られる~
といった、いわゆる「怨霊信仰」的な感性が少なからず影響していたのかも
しれません。

つまり、敗者・神様は生き残ったわけです。
しかし、パンチパーマ風のヘアスタイルなど、民からすれば勝者・仏様は
あまり異国情緒が強すぎて、なんとなく「親近感」を抱けません。
~だって、仏様って外見からしてもモロに外国の神様だもんねぇ、
 やっぱりボクは、昔からの地元の神様の方に親しみを覚えるなぁ~


ですから、勝者であるはずの仏様も、実は人気の点では、絶対的な支持
というところまでには至りませんでした。
要するに、入国は認められたものも、「仏様は外国の神様」という意識の
方はなかなか消えなかったわけです。

そこで、仏教側、つまり神仏で言うなら仏様側は、新たな人気と信徒を
獲得するのために、超難度「ウルトラC」(古い!)技の攻勢に出ました。
これが、神経衰弱・・・ではなく「本地垂迹説」(ほんじすいじゃくせつ)
で、メッチャ乱暴に要約するなら、こんな主張です。
~どうもキミ達は仏様と神様を分けて考えるきらいがあるが、それは
 トコトンの大間違いで、何を隠そう実は神様の正体は仏様なのだ~


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 明治時代「廃仏毀釈」/  平安時代「本地垂迹」

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ええぇ、いったい何を言っているの? 
第一、神様と仏様ではその人相風体がまるっきり違っているじゃないのさ!
~そりゃあオマエ、昔の昔にとんと見慣れぬパンチパーマの風体で
 いきなり登場したのでは、オマエたちだってさすがに ビックリこいて
 しまうだろう。 
 そこで、今までは、それなりの気遣いをした仏様が、民が見慣れた地元の
 神様風スタイルで登場していたのだ~


つまり、こう言っていることになります。
~神様とは、キミ達が馴染みやすいように、わざわざ「コスプレ」までして
 くれた仏様ご自身のことであるぞよ~
もっとも、これと裏返しの「仏様は、実は神様の化身である」とする主張
もないわけではなかったのですが、こちらは「反本地垂迹説」との名称で
呼ばれることからも推察される通り、「本地垂迹説」の存在があっての、
その裏返しの理論になっています。

その意味からすれば、ここでも「神様は仏様に負けた」ことになり、
星取表なら「神様2連敗/仏様2連勝」ほどのイメージになるところです。
ただこうした経緯があったにせよ、一方が一方を滅亡・消滅させてしまう
ような手荒な真似は一切ありませんでした。
神様・仏様はその後も長く当然の如く共存されたわけです。

~ボコボコに叩き潰して滅ぼしてしまっては、恨みも積り祟られる~
おそらくは、根底にこんな意識があっての計らいなのしょう。
しかし、仏様に対して「2連敗」を喫したことに、ひょっとしたら、神様の
内心には忸怩たる思いが芽生えて始めていたかもしれません。
「いつかは借りを返さねば」 こんな気持ちです。

なんとそれから「雌伏数百年」を経たのちに、ついに神様がリベンジに
立ち上がりました。
それが「廃仏毀釈」(はいぶつきしゃく)と言われる出来事で、簡単に
言うならこうした動きでした。

~これまでは、神様仏様の区別なく同じように信仰する「神仏習合」
 スタイルを長い間続けてきたが、それを止めにして、これからは
 神道一本に絞ってしまおう~

こうした一連の行動が明治維新(1867年)以降になって表面化してきた
のです。

穏やかな日本民族には、なんとも似つかわしくない過激な思想ですが、
それにはそれなりの理由がありました。
~キリスト教という強烈な思想・原理の下に行動する欧米各国と
 向き合おうとするならば、これまでように外国出身の仏様までを含めた
 寄せ集め?「神仏習合」スタイルではあまりにユルすぎて生温い。
 ここはやはり地元出身の神様を前面に立てることで、自ら民族の強固な
 アイデンティティを再確認・自覚すべきである~


そのために、仏教寺院のみならず仏像や経文も、仏教関連の全てを捨て
破壊することを目標にしたのです。
その激しさは半端ではなく、そのいくつかの例を挙げるなら、以下の通り。

○大阪住吉大社の神宮寺の二つの塔をもつ大伽藍はほとんど破壊。
○華族の墓地も仏教方式から神道方式へと変更させられた。
○興福寺の五重塔は、売りに出され薪にされようした。
○伊勢神宮のある宇治山田では寺院の数が約300から約15にまで激減。
○薩摩藩では寺院1616寺が廃され僧侶2966人が還俗した。
○千葉県・鋸山の五百羅漢像はすべてが破壊された。

このように、今度は明らかに「神様勝利/仏様敗北」と言える状況を
呈しました。
ですから、長い間の通算成績は、ここに至って「神様1勝2敗/仏様2勝1敗」
と判定することができるのかもしれません。

要するに、神様からしてみれば、この明治期「廃仏毀釈」において
「雌伏数百年」至る以前の2連敗を帳消し、その上にそれまでの屈辱感?まで
払拭したのですから、いわば「悠久のリベンジ」を果たしたことになる
わけです。

しかし、それでも、ここでの勝者・神様が敗者・仏様を滅ぼしてしまうこと
はなく、現在なお数多の仏様がご健勝にてご活躍されていることはご存知の
通りです。
そこで、信仰的ノンポリというか、不信心のバチ当たり者であろう
筆者なぞは、こんな風にも受け止めている次第です。

~飛鳥時代の「崇仏排仏戦争」も、平安時代の「本地垂迹説」も、
 はたまた明治時代の「廃仏毀釈」にしても、つまるところは
 「神様仏様のいずれが正統で異端なのか」を判定すべく招いた戦争・論争・
 騒動だった~

しかし、その結果としていずれかが滅んでしまうこともなく、その両者が
現在でもご健勝にて活躍されていること思えば、結局我が民族にとっては
神様も仏様も分けへだてなく崇める「神仏併存」スタイルが似合っている
のかもしれんなぁ。



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