日本史の「世界標準」26 国際派?KOBANの知名度

道端で見つけた千円札一枚を律義に交番へ届けたものの、折悪しく交番巡査
が不在だったために、後日の出直し手続きが一層面倒になってしまった。
あまり食指の動かないこんな出来事を、何を思ったものか仲間の一人が、
自分の体験としてひどく得意気に話してくれました。

交番巡査が不在だったことはたまたまのことであり、当人の手柄でも
なんでもないのですが、しかし、こうした場合はまあ顔を立てておいた
方が無難なことくらいは、筆者も大人ですから経験的に学んでいます。 
で、ここは大人の対応。

筆者~交番へ足を運ぶなんて、結構久しぶりじゃなかったのか~
ところが、この愛想の言葉にえらく熱っぽい反応が。
仲間~普段はあまりご縁がないので、トント気にすることもなかったの
   だが、そもそも「交番」って一体なんのこっちゃ~

こうした雑学系?(だけではないが)の知識にはとんと疎いので、受け
答えも差し当たり程度の無難な範囲に留めます。

筆者~江戸時代の「自身番」とか「番屋」がルーツであり、「交代で番を
   する」意味から「交番」との呼び方になったらしい~
何を言わせたいのか、再度の質問です。
仲間~番? 番って、いったい何の番をしていたんだ?~

そりゃあ、こちらだってそこまでの知識は持ち合わせていませんから、
ちょいとぼやけた回答になります。
筆者~簡単に言えば「自警団」みたいなもので、少し大袈裟にいうなら
   治安維持の役割の一端を担っていた、ということじゃないのか~

なんとなく心細く感じたのであとでこっそり調べてみると、そうしたこと
だけではなかったようです。 まずは、「自身番」の説明。
~江戸時代に消防、自警団の役割をしていた~
そして、「番屋(番所)」の説明。
~(上記の)「自身番」の詰所のこと~

だったら、江戸時代の「番屋」と現代の「交番」はほぼほぼ同じ役割を
担っていたかのようにも思えるところで、確かに重なっていることも
あります。
しかし、必ずしもそうとは言えない部分もあって、たとえば、こんなこと
までも仕事の内とされていたようです。
~江戸時代の「自身番」は、ゴミの始末、し尿処理、長屋内の清掃、
 共同井戸の管理、防火や消防施策、冠婚葬祭の立会人なども務めた~


この辺りは、現代の「交番」とは明らかに守備範囲が異なっています。
だって、現代の「交番」が「し尿処理」に奮戦している光景なんかは、
筆者自身目撃した経験がありません。

しかし、これは仲間が仕掛けた前フリに過ぎなかったのです。
仲間~実を言えば、今回の拾得物届け出騒ぎで初めて発見したのだが、
   交番建屋の外壁には「KOBAN」なるアルファベットが書かれている~


うん、確かに。 
しかし、それは、いうなれば表札・看板代わりの案内ということですから、
交番建屋に「KOBAN」の文字があっても、何ら不思議でないように思われ
ます。 ところが、彼の拘りは別のところに。
仲間~なにゆえ「KOBAN」なるアルファベットで書かれてあるのだ?~

うーん、この綴りを素直にローマ字読みすれば、大判小判を連想させる
「こばん」であって、「こうばん」と読むのは確かにちょっと苦しい印象
です。
しかし、どうであれ、「交番」を「KOBAN」と、トレンディーに表記した
だけのことですから、それに目くじらを立てるのもちょっと大人げない。

仲間~大人げがあるないの問題ではなく、オレが疑問に思うのは、その
   「KOBAN」なる文字情報を、どなたに向けて発信しているのか、と
   いうことだ~

そんなもん、分かりそうなものじゃありませんか。
わざわざアルファベットを使っているのですから、それが読める方たち、
たとえば日本人なら小学生以上とか、それ以外なら、日本語文字が不得手な
外国人とか、あるいはその旅行者の皆さんたちも含めたいところです。

仲間~オマエはアホか。 そういう人たちがダ、仮に意図した通りに
   「こうばん」と読めたとしても、その「交番」ってものの役割が
   本当に理解できるか、そちらの方が大きな問題だろうが~


ポリス交番01.jpg 番所自身番01.jpg
交番・KOBAN/番所の風景

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アッチャー、なるほど。
こちらの腹積りに沿って「こうばん(交番)」と呼んでくれたとしても、
それが「POLICE」の機能を備えた施設ってことまでは確かに伝わらない。
そりゃあ、そうでしょう。
「交番=POLICE」ってのは、日本人の常識になってはいても、外国人に
とっては学習を必要とする情報ですから。

仲間~そう考えると、「KOBAN」なる表札?は適当とは言えず、むしろ
   「POLICE」との直截的な表現の方が理屈に叶っていることになり
   そうだ~

言われてみれば、確かにそうかもしれん。
だったら、今日から隔靴掻痒の感がある「KOBAN」表示から「POLICE」
へと表示を一斉変更させればいい。

ところが、「KOBAN」となったのには深い事情がありました。
警察庁が「KOBAN」と全国統一したからです。
もし、これが正しい情報だとしたら、なんでまた警察庁は、グローバルな
「POLICE」を使わず、日本限定仕様?もどきのローカルな「KOBAN」を
選んだのだろう。 やっていることが、ちょっとヘンなのでは?

ところがギッチョン。 そうとは言い切れない背景もあったようです。
とっても意外なことでしたが、要するに警察庁は、
~日本の交番制度は、「KOBANシステム」として認知され、
 国際語として市民権を得つつある~

こう捉え、「KOBAN」の全国統一表示に踏み切ったとされているのです。

おいおい、「交番/KOBAN」って本当にそこまでグローバルなのか?
ついつい、ツッコミを入れたくなりますが、少なくとも筆者が想像して
いたほどにローカルではなく、そこそこ知られていた様子もうかがえます。
~日本(自分)の常識は、世界(世間)の非常識~
これも、その一例なのかもしれません。

20世紀の出来事ですから随分昔のことになりますが、その頃の
シンガポール政府は、頻発する外国人犯罪に困り抜いていたようです。 
そこで、その撲滅のための取り組みを始めました。
ここで注目したのが、犯罪の少ない国・日本の「交番制度」でした。

その先の詳しいところまでは承知しませんが、まあ普通に考えれば、町の
そこかしこに「警察官」が存在するというシステムに、大いなる関心を
示したということでしょう。

協力要請を受けた日本側は、それに真摯に取り組み、1981年から専門家の
派遣や実務研修などを行ない、わずか二年後(1983年)にはシンガポール
交番(NPP: Neighborhood Police Post)第1号を誕生させました。
こうした「交番」の増加に伴って、課題であった犯罪の発生率は急激に
低下していったとされています。

海外で「交番」が注目を集めたのは、こればかりではありません。
日本独自の「KOBANシステム」として米国大学教授に紹介されたそう
ですし、少しづつですが、他の英語文献にも「KOBAN」の表記が
増えていったようです。

おそらくは、こうしたことが警察庁をして、
~日本の交番制度は、「KOBANシステム」として認知され、国際語として
 市民権を得つつある~と判断したものでしょう。

それにしても、千円札一枚の拾得が日本警察機構の歴史に繋がっていく
なんて、スゴいと言うべきか、はたまたヒマ人と言うべきか、なんとも
「浮世離れ」していることだけは間違いなさそうですネ。



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