日本史の「微妙」07 会議は”根回し”にあり!

現代日本人には、議論をぶつけ合う形になる「会議」自体をあまり好まず、
むしろそれよりは事前の“根回し”という手続きの方に、より重点を置く習性が
あるように感じられます。
根回し”という事前調整?を駆使することによって、本番の白熱議論を
避けておく方が仲間集団の和を保つためには無難とする意識でしょうか。

しかし、こうした「根回し会議」?はなにも現代に始まったことでもなく、実は
昔々の「戦国時代」にもままありました。
たとえば、尾張・清州城で開かれた、いわゆる「清州会議」(1582年)も、
そうした例の一つに挙げていいのでしょう。
これは、「本能寺の変」(1582年)で主君・織田信長(1534-1582年)が
倒れた後の織田家後継者を決めるための重臣会議でした。

出席者は、いずれも織田家家臣であり、それぞれがそれなりの発言力を
持つ柴田勝家(1522?-1583年)・丹羽長秀羽柴秀吉(1537-1598年)・
池田恒興の四人。
ただ、同様の立場にありながら、滝川一益(1525-1586年)だけは、出陣中
だったのか、あるいは参加を拒否されたのか、いずれにせよ加わることは
叶いませんでした。

この席で、織田家後継者に信長三男・信孝を推す勝家に対し、秀吉は
信長嫡男・信忠のそのまた嫡男、つまり信長の嫡孫に当たる三法師
(後の織田秀信)の擁立を主張し、意見は真っ二つに。

~たった今、三法師が前途多難を織田家の担うのはさすがに無理がある~
勝家のこの意見は、その三法師が当時わずか3歳の赤子であったことを
見据えた「現実論」に立っていました。
ところがこれに対し、秀吉は~嫡男の血筋が後継すべき~とするスジ論を
展開しました。
もっとも、これには自分が後に「天下取り」をする目論見があってのことで
したが、それはともかく、結果は?・・・もちろん秀吉の意見が勝ちました。

なぜなら秀吉は、すでに長秀にも恒興にも、しっかり“根回し”工作を、
もっと露骨な表現を用いるなら、“一本釣り”を仕掛け、「秀吉案に同意」の
内諾を得たうえで会議本番に臨んでいたからです、
たぶん彼らには、金銭なり役職なり、十分すぎるほどの「見返り」が約束
されていたハズです。

迂闊にもそのことに気が付かず、結果として多数決で押し切られる形に
なった勝家は、その後織田家の中での影響力を著しく低下させることに
なります。
逆に秀吉の発言力を大いに高めたということですから、この大逆転が、
両者対決の構図を一層鮮明なものにしていったのは当然の成り行きです。

さらには、“根回し会議”が疑われるこんな事例もありました。
その「清須会議」の勝者であり、その後「天下人」として君臨した秀吉の
死後、天下取りを目論んだ徳川家康(1543-1616年)が、今や宿敵となった
秀吉の腹心・石田三成(1560-1600年)らの挙兵を誘うために、会津征伐を
理由に自ら遠征する行動に出た時のことです。

その「誘い」にまんまとハマった三成が挙兵したのを知るや、さっそくのこと
家康は従軍諸大名を集めて「軍議」に及びました。
これが天下分け目の「関ケ原の戦い」(1600年)の直前に開かれた、
いわゆる「小山評定」※です。 ※下野国・小山(おやま)

秀吉三法師51 清州城51










 羽柴(後の豊臣)秀吉と三法師/清須城(愛知県清須市)

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この時の家康は、諸大名に対し状況を説明した後、こう言い出したとされて
います。
~各々方には大坂(三成側)に人質を取られておるという事情もあろうから、
  三成につくも自分(家康)につくも各自の自由にしてくれて結構であるッ~


なにせ戦国の世ですから、諸大名とてそれそれが各方面に複層的な
「しがらみ」を抱え込んでいます。
そんな環境のなかで、ましてや「天下分け目の戦い」を前にした時期に、
そう言われると、なおのこと、諸大名には逡巡の気持ちが働こうというもの
です。 
ところが、いささか意外?なことに、こんな意見が飛び出しました。
~大坂のことは考えず、内府(家康)殿にお味方ッ!~
意外?というのは、これが周囲からは“秀吉子飼い“と目されていた
福島正則(1561-1624年)の発言だったからです。

このことによって「バスに乗り遅れるな」の気分が噴き出したものか、
さらに山内一豊
(1545-1605年)からもこんな発言が。
~ボクはお味方するだけじゃなく、ついでのことに、我が居城・掛川城も、
  さらには兵糧も提供いたしますぞッ~

つまり、絶対に「裏切らない/裏切れない」ことを、こんな言い方で示した
わけです。

会議の場がこんな雰囲気になっちゃうと、残った者もそれに追随せざるを
得ません。 実際その手の発言が相次ぐ形になり、この軍議は随分の
盛り上がりをみせました。
ちなみに、このとき流れに竿さす形で退転の意を示したのは、信濃上田城主・
真田昌幸(1547-1611年/幸村の父)や美濃岩村城主・田丸直昌
(1543-1609年)など、ごく少数だったようです。

こんな場の雰囲気に逆らって、堂々と「反対意見」を表明したのですから、
この真田昌幸にせよ田丸直昌にせよ、ある意味では、ちょっとばかり
「日本人離れ」した感性の持ち主だったと言えるのかもしれません。

つまり、家康からすれば、この「小山評定」は大成功を収めたことになる
わけですが、このあまりに劇的な運びに、本当にウラはなかったのか?
「清州会議」の経緯を振り返るなら、この「小山評定」にもそれなりの
事前”根回し“があったとしても、そうそう不思議なお話ではありません。

第一に、家康・正則・一豊など主だった人物それぞれが、あたかも
青春ドラマ風の「熱いセリフ」に終始している点が、いささか不自然と
言えば言えなくもありません。
つまり、“根回し”の事実?には触れることなく、ひたすら「熱いドラマ」として
後世に語り伝えたということになりそうで、こうしたことは勝者側が持つ
当然の権利?ということなのかもしれません。

以上を整理すると、こうなります。
~清州の場合は、事前の“根回し”があったことが確認できるから、これを
  「清州会議」と呼ぶ。 しかし、事前の“根回し”の存在が証明できなかった
  小山の場合は「会議」とは言わず、これを「小山評定」と呼ぶ~


チョイとダメ押しをしておくなら、「小田原評定」という言葉もあります。
史実はともかく、この言葉が「故事ことわざ」として使われる場合は、
~長引くだけで、いっこうに埒があかない相談のたとえ~
になっているところからすれば、つまり、日本人は昔々の「戦国時代」に
おいてすら、“根回し”のないものを「会議」とは呼ばなかったということになり、
それをさらに突き詰めるなら、今回表題の通り、~会議は“根回し”にあり!~
こうなるわけです。

ちなみに、この「根回し」が日本民族の個性の一つになっていることは、
それこそ疑う余地もない、つまり「懐疑」(かいぎ)するまでもない明々白々の
事実なんですねぇ、これが・・・粋な?ダジャレがバッチリ決まったところで、
へぇ、おあとがよろしいようで。



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