日本史の「信仰」03 ゼウスに関する二三の問答

~そもそもの“始まり“はどうだったの?~
面と向かってこう訊かれると、その返答に困ってしまうものも、
世の中にはままあります。 
たとえば、「宇宙の起源」などがその通りで、
~今から約137億年前に起きた大爆発「ビッグバン」から
  始まったのだゼ~


これ位の説明で納得してくれればともかくも、
~じゃあ、それより前はどうなっていたのさ?~ 
こうツッコミを入れるヒつこいガキ、いや好奇心旺盛なお子様が
相手だと、その返事に詰まってしまう人がほとんどでしょう。 
自分自身とて、実際そこまで考えたことがないからです。

実はすでに江戸時代(1709年)に、これに似た出来事が起きて
いました。
燃える使命感を抱き、なんと“武士”姿に変装?して、
日本(屋久島)上陸を果たしたイタリア人カトリック司祭・
シドッチ(シドッティ/1668-1714年)と、その折の尋問に当たった
幕府実力者・新井白石(儒学者/1657-1725年)との間で
交わされた問答がそれです。
※チョンマゲ頭、和服に大小二本差しという、かなり念入りな変装にも
  かかわらず、日本語が使えないために一発で見破られたとか。


その取り調べに際してシドッチは、問われるままにキリスト教の
教えを熱く語りました。
~ええですか、「全能の神・ゼウス」がこの世のすべての物を
  造ったのです。 これはぜってぇに間違いありません!~

おそらくは「the Creator」とか「創造主」とか、あるいは「造物主」
という言葉も、こうした概念を言い表したものだと思われます。

それに対し白石は、まさに典型的な日本人というにふさわしい
こんな疑問をぶつけました。
~ふーむ、万物は自ら成るものではなく、その創造主である
  ゼウスさんとやらが造ったのだと言うのだな。
  ふーむ、アンタの見解が正しいとしたらだ、それじゃあ、
  そもそも、そのゼウスさんを“どなた”が造ったのかな?~


追い打ちをかけるように、
~もし、ゼウスが自ら成ったというのなら、天地も自然も万物も
  自ら成れるはずではないか、えええ、そうではないかッ!~


まさしく「ビッグバン以前の宇宙」を訊いてくるヒつこいガキに似た
ツッコミですから、おそらくシドッチも一瞬固まったものと思われ
ます。 白石サンって、ヤな性格の日本人だなあ~



ビッグバン51 シドッチ62









ビッグバン/シドッチ司祭

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同様にアダムとイブのお話にもツッコミを入れたようです。
~アダムとイブが戒めを破った罪をダ、三千年も後になって、
  ゼウスが変装?したイエスと名乗る人間が登場して、それを
  贖うなんてお話はメッチャまどろっこしく、モロにヘンだ!~


これだけではありません。
さらには、「ノアの方舟」のくだりにも触れています。
~「全能の神」というのが事実ならダ、皆を善人になるように、
  はたまたキリスト教の教えが唯一優れたものと言うのならダ、
  それに従うように指導すべきがスジである。 それをだな、
  ちょこっとばかり言うことを聞かんというだけで、一気に人類
  のほとんどを溺死させてしまうとは、そのゼウスとやらは、
  一体全体何を考えとるのだぁ・・・本末転倒ではないのか?~


要するに、シドッチの一連の教義説明を、白石は「子供だまし」の
お話と受け止めたようです。
ですから、「天国」についてもこんな理屈を披露しています。
~それにダ、天地創造より以前に善人のための天国を造ったと
  いうなぞは、天地ができておらず人間は善悪も知らないときの
  ことだから、お話自体がホコタテ、つまり矛盾しとるだろうに
  ・・・どうだ、違うか!~


う~ん、言われてみれば、日本人・白石が放った理屈にも、
一理ある印象です。
とは言うものの、白石自身は彼が持つ人格・学識には敬意を
払っていたようで、本来なら死罪を免れない外国人密入国者・
シドッチの「本国送還」を幕府に具申もしています。

白石のこうした尽力もあって、結果的にシドッチは軟禁とはいう
ものの、給料も得るという破格の待遇を得ました。
ただその後において、世話係を務めていた下男の老夫婦が、
キリスト教徒になったことから、その責任を問われ、1年を経ず
して地下牢で衰弱死(46歳/1714年)するという、なんとも悲惨な
最期を迎えたのですが。

それで、冒頭の「宇宙論」に戻りますが、
~じゃあ、「ビッグバン」より前の宇宙はどうなっていたのさ?~
このヒつこいガキの質問に、こんな回答はいかがでしょうか?

大人 ~ええか、よく聞け。 実は金輪際何も無かった!~
ガキ ~ウッソゥ! なんでそう言い切れるのさ?~
大人 ~その時のことをオジサンはこの目で見ていたからダ~
次代の人間を逞しく育てるための“方便”というわけです。




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