日本史の「怪人」12 なにか妖怪九日十日

~こんな良いところもあったが、この点は短所だった~
その人物の評価は、このように長所短所、あるいは功罪を
併せて語られることが普通です。
ところが、~こんな悪いところもあったが、この点も短所だった~
こんな口調で語られる人物も、歴史の中には少数ながら存在
しています。

そういう人物の一人として、幕末から明治に生きた「鳥居耀蔵」
(とりい・ようぞう/1796-1873年)の名が挙げられても不思議では
ありません。 
なにせ、アダ名が「妖怪」・・・これは通称の「耀(よう)蔵」と、
官位の「甲斐(かい)守」から「耀(よう)甲斐(かい)となったもの
ですから、その嫌われぶりも容易に想像できるところです。

しかしなんでまた、そうまで嫌われ者になったのか?
理由はいくつも挙げることができます。
「蛮社の獄」(1839年)では鎖国政策に批判的な洋学者たち
  (渡辺崋山・高野長英ら)に対して徹底的な弾圧を加えた。
讒言(でっち上げを言う)によって南町奉行を失脚(1841年)させ、
  ちゃっかり自分がその後釜に納まった。

○目付けや南町奉行として、「おとり捜査」を愛用?するなどの
  方法で、厳しく市中の取り締まりを行なった。
○諸大名・旗本と対立して形勢不利となった際には、コロッと
  寝返るや、機密資料を相手側に残らず横流しした。
○いわゆる「天保の改革」に批判的だった北町奉行・遠山影元
  (遠山の金さん/1793-1855年)を閑職に追いやった。

こうした一連の行動には、ゲシュタポ(秘密警察)を連想させる
ものがありますが、その手は休まることはなく、一時期はコンビ
を組んで「天保の改革」を推し進めていた老中・水野忠邦
(1794-1851年)を、耀蔵自らが権謀術数を駆使して失脚させる
こともしています。

しかし、後に水野が復権を果たした際には、今度は耀蔵の方が
不正を理由に解任され、そればかりか厳しい有罪判決まで
喰らうハメに陥りました。

「全財産没収」の上、丸亀藩にお預けの身に・・・実質軟禁状態
のこの措置は、明治維新の際に恩赦を受けるまでの間、20年
以上の長きに渡って続いたのです。


鳥居耀蔵天保の改革01 金四郎千恵蔵









  鳥居耀蔵:後姿(天保の改革)   遠山金四郎(演:片岡千恵蔵)

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明治政府による恩赦で明治元年(1868年)に、ようやくのこと
幽閉を解かれることになったものの、当の耀蔵は、この時に
おいてさえ決して従順な態度を見せませんでした。

~自分は将軍家によって配流されたのであるから、上様からの
  赦免の文書が来なければ自分の幽閉は解かれない~

こう主張してなかなか動こうとはせず、恩赦した新政府や、その
身柄を預かっていた丸亀藩を困らせたと伝わっています。

さらには、~開国したことが幕府滅亡の原因である~とか、
東京と改名された旧江戸についても、
~自分の言う通りにしなかったから、こうなったのだ~とか
その後においても、「外国を受け入れた世の中」に対して、とかく
批判的な意見を吐き続けたようですから、徹底した「外国嫌い」
だったことは間違いありません。

その意味では、「蛮社の獄」における洋学者たちに対する過激な
処置も、自らの信念に沿ったに過ぎなかったのでしょう。
ということは、時の日本が必要とした「有能な人材」を、結果と
して失わせることになった顛末についても、耀蔵自身は
むしろ「悪人退治」を果たしたかのような、ある種の達成感を
味わっていたのかもしれません。

で、この上ない?「悪評」が耀蔵につきまとったことで、逆に
得?をしちゃった人物が、同時期に同じような立場で活動して
いた遠山影元です。

実際にはそれほど目立つ功績を上げたわけでもないようですが、
耀蔵に漂う強烈な悪人イメージと比べるなら、遠山影元に限らず、
誰だって根っからの善人・正義の味方に映ってしまいますからね。

そうした下地があったからこそ、奉行・遠山(景元)金四郎様は
~これより吟味を致す、一同の者面を上げいッ!~に始まり、
~これにて一件落着ッ!~までのお約束の流れで、現代に
至ってもなお、徹底的な「正義の味方」としてドラマなどで活躍を
続けているわけです。

逆に言えば、もし鳥居耀蔵が人並み程度の悪人?だったと
したら、「名奉行・遠山金四郎」の誕生はなかったかもしれんゾ、
という名判決?をもって、今回は~これにて一件落着ッ!~




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273 日本史の「怪人」09 実在?架空?この人物 実在した意外な人物!
262 日本史の「怪人」08 洋学者”象山”の日本人離れ その面貌と大言壮語
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