日本史の「ツッパリ」12 筋を通せばクビが飛ぶ

現代では「身分意識」が希薄になっていることの上に、元々
その名称自体が堅苦しいことも重なって、江戸後期の事件?
いわゆる「尊号一件(そんごういっけん)」が注目されることは
あまりないようです。

そもそもこの事件?は、天皇が自分の父に尊号「上皇」を贈る
よう、幕府に対して希望したことが始まりでした。
「上皇(太上天皇)というのは、皇位を譲った天皇に贈られる
尊号ですから、平たく言うなら「元・天皇」を意味します。

幾分ややこしい話ですが、先代「後桃園天皇」が皇子がないまま
崩御されたことを受けて、その養子となって後継したのが
この「光格天皇」(在位1780-1817年/典仁親王の子)です。

ところがこうなると、光格天皇の「実父・典仁親王」は天皇未経験
者ですから、当然「上皇(元・天皇)」ではないということになって
しまい、このことが光格天皇の心に引っ掛かりを生みました。

「親は友達です」という言い方さえ抵抗なく受け入れている現代人
からすれば、~天皇になれたのに何の不満があるのだッ?~
なりますが、そこはそれ、昔のことであり格式高い家柄の方です
から、そうは考えません。

~これでは父チャン(典仁親王)の身分が、ボク(光格天皇)より
  低いことになって、いかにもバランスが取れん!  やっぱり、
  なにがなんでも父チャンを「上皇」にせねばならんゾ~


ところが、幕府は光格天皇のこの要望を突っぱねました。
老中・松平定信(1759-1829年)の言い分はこうでした。
~そんな先例はありゃせんワイッ!~(1788年)

実は定信も、そうした先例があったことを承知はしていたよう
ですが、「それは戦時の緊急措置であって、平時は対象外だ」
いうのがその理屈でした。 ともかく、その後もこの尊号「上皇」
巡る幕府VS朝廷のスッタモンダは続きました。


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    第119代/光格天皇       第11代将軍/徳川家斉

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ところが同じ頃、幕府内でも同様?の問題が浮上していました。
先代(10代)将軍・家治の後継者が急死し、そのまた次の候補者も
病弱であったことから、急遽「養子」になった家斉(1773-1841年)が、
その後の11代将軍(在任1787-1837年)を継いだのです。

先の光格天皇と同様に、この家斉も実父・一橋治済に対し、
「前将軍」を表す敬称「大御所」を贈ろうとしました。
やっぱり、父チャンより身分が高くなってしまうことの抵抗感は
大きいものがあったようです。

光格天皇と家斉将軍、なまじ「ソックリな事案」だけに、裁定を
下す立場にあった老中・松平定信はすっかり困っちゃった。
しかし、天皇の要望を拒否した手前、将軍の要望だけを認める
わけにもいきませんから、結局のところ、こちらにも「ノー」と
回答するほかありません。

この返事にムセッ!ときたのが将軍・家斉です。
~いい度胸だ、老中の分際で将軍の要望を蹴るってかッ!~
結果的には「筋を通した」ことが裏目に出て、定信は辞職・・・
つまり失脚の憂き目を見ることになりました。

もっとも、実際はこんな単純なお話でもなく、治済には「大御所」
を手にしたら、それを足がかりに自らの影響力を幕府中枢にまで
広げる腹があって、それを見抜いた定信が先手を打った、とする
見方もあるようです。

ですから、定信を多少カッコよく紹介するなら、~天皇の要望で
あろうが、将軍の要望であろうが、権威を恐れず、スジを通し
(屁理屈をこねて?)ツッパリ切った男~
ということになりましょうか。

しかしまあ、この「尊号一件」の経緯は現代家庭の「父チャン」族に
こんな思いを抱かせるかもしれません。
~エッ、息子がそこまで「父親」を大切に思う時代があったのか
  ・・・だったら、オレも江戸時代に生まれときゃ良かったなあ~




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---これまでの 「ツッパリ」 シリーズ---------------
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173 日本史の「ツッパリ」10 五尺の体にみなぎ気迫 大和魂か蛮勇か?
144 日本史の「ツッパリ」09 ♪地球の上に朝が来る 驚天動地の新神様!
132 日本史の「ツッパリ」08 釜かぶり今昔物語 どうせなら最期もド派手に!
126 日本史の「ツッパリ」07 天武系百年のストレス人生 薄幸と断絶の結末!
109 日本史の「ツッパリ」06 心頭滅却すれば・・・ 心の持ち方が肝要なのだ!
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