日本史の「アレンジ」05 倶利伽羅峠のからくり

木曽義仲VS平維盛の「倶利伽羅峠(くりからとうげ)の戦い」
(1183年)には、義仲軍が角に松明をくくりつけた数百頭の
「牛」を敵に向けて放ち、その結果、大勝利したというお話が
伝わっています。

大変にユニークな作戦ですが、これが史実かどうかは、
また別問題で、現に疑問視する向きも少なくないようです。
そりゃあそうでしょう、「角に松明」ということは当の牛にすれば、
~少し上目使いをすれば「炎」が見える~ことですものね。

それはすなわち~自分の頭が燃えている~ようなもので、
たまには、頭のテッペンに火の粉も降りかかるでしょうから、
まあ、かなりおっとりした性格の牛でもパニックに陥って
暴れまくるだけのところでしょう。

運が悪ければ、それを仕掛けた義仲軍側に「暴れ牛」の
犠牲者が出るところで、少なくともお話のようにすんなりと
「敵に向かって直進」したとは考えにくい気がします。

さて、この「オモシロ話」は「源平盛衰記」で紹介されているとの
ことですが、さらにその元ネタは中国の故事「火牛の計」に
求められるそうです。


画像
















 火牛像 (道の駅 倶利伽羅 源平の里) 石川県河北郡津幡町
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もっとも、元ネタの方はもう少し合理的?に、
~「角」には剣を、そして「松明」は尾にくくりつける~とされ、
つまり、牛の視野に「松明の炎」が入らないように、そして
頭に火の粉が降りかからないように配慮されているようです。

で、これでどうするかといえば、~突進する牛の「角の剣」が
敵兵を次々に刺し殺し、「尾の炎」が敵陣に燃え移って大火災を
起こす~
という段取りになっているそうですから、これでも、まだ
オモシロすぎる印象は残ります。

しかし一応、~この方法であれば理屈に合っている~とされて
います。
つまり、いわゆる「尻に火がついた」牛は、たまらず前方へ
「モー進」するハズだ・・・という解釈のようです。

牛とはあまり深い付き合いもなく、また牛の「尻に火をつけた」
経験もないワタシですから、軽々なことは言えませんが、
それでも充分な納得ができていないのが正直なところです。

それはともかくとして、では、「倶利伽羅峠の戦い」の顛末は
どうなったのかといえば、義仲軍の数倍の戦力であったにも
かかわらず、維盛軍は追い詰められ、その将兵たちは峠の
断崖から次々に転落し、事実上の壊滅状態になったとされて
いるのです。

それなら、「牛の角に松明」なんて唐突感のあるお話を
持ち出しさずに、あるがままに~戦力不利の中、義仲軍は
正々堂々と戦って完全勝利をおさめた~
とした方が断然
カッコイイと思えるのですが、そういうこともしていません。

また、もし、義仲軍が「智略」にも富んでいたことを強調したい
のであれば、なにも「牛」にこだわる必要もなかったはずです。
それでは、なぜ、「牛の角に松明」を持ち出したのでしょうか?
その理由は、多分こんなところにあるのでは?・・・

元ネタ「火牛の計」のお話を知って大変に気に入った人物が、
どこかでこれを披露したいと思っていたところへ、絶好のチャンス
が訪れました。
「源平盛衰記」の執筆?がそれです。

しかし、「まんま」で盗作?するのは、さすがに気が引ける。
それで、改編すなわち「アレンジ」することを思いついたわけです。
原典が「角に剣、尾に松明」なら、よし、自分はその逆の
パターンでお話を進めてみようというところです。

そして、「牛の角に松明」という、結構破天荒なエピソードが
出来上がったということなのでは?・・・
しかし、安易な「アレンジ」の割には、意外な好評を得て、結局、
現在までそれが語り継がれることになりました。

その「好評」ぶりの証拠が、そのお話にあった通りの「角に松明」
「火牛像」が、現在もこの倶利伽羅の地に残されているという
事実でしょう。

そればかりか、地元の「源平火牛まつり」では、最近になって
メインイベントとして「火牛の計レース」も行われているようです。

小耳に挟んだところでは、この場合、登場するのは
「本物の生きた牛」ではなく「藁製の牛」だそうですから、やっぱり
内心では~牛がパニックに陥って暴れまくる~ことを心配して
いるのかもしれません。

地元の皆さんにはさらなる発奮をしていただき、どうせなら、
「本物の生きた牛」で試してもらいたい気がします。
ただ、もちろん、その時のワタシはレース現場に近づかないよう
にするつもりですが・・・





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