日本史の「ツッパリ」06 心頭滅却すれば・・・

昨今のお天気は極端から極端へ走る傾向があって、
夏は夏で「アッ~チイよう!」、冬は冬で「サッ~ブイよう!」と
悲鳴を上げる人も少なくありません。
この根性なしめ!
~心頭滅却すれば火もまた涼し~という言葉を知らんのか!

この心意気は、臨済宗の僧・快川(かいせん)が辞世として
述べたことになっています。
「心をカラッポにすれば、火なんて熱くもないゾイ!
むしろ涼しいくらいのもんジャ!」
ほどの意味ですから、
いきおい、夏の暑さ、冬の寒さ程度のことがナンボのもんじゃ!
ということになります。

しかし、快川和尚は、またなんでこんなにツッパって
ミエミエの「痩せ我慢」を唱えたのでしょうか?
ワタシの知る限り、火は昔から熱いハズです。
さて、当然のことながらお話の展開は歴史がらみとなってきます。

この快川和尚が亡くなったのは1582年4月、つまり
あの織田信長・暗殺事件「本能寺の変」の数ケ月前のことです。
織田信長との戦いで逃げ込んできた甲州側の武将たちを
快川がお寺(恵林寺・えりんじ)に匿ったのがお話の始まりでした。

当然のごとく、寺に対しては織田側からの身柄の引渡し要求が
出されます。
これを快川和尚は頑なに、キッパリ、断固として拒絶しました。

その態度が頭へきたのでしょうか、織田側は「そんなら、
思い知れ!」と(言ったかどうかは不明ですが、)とにかく一山
丸ごと焼き討ちにすべく火を掛けた次第です。

このときに燃え盛る炎の中で、快川和尚が冒頭の
~心頭滅却すれば・・・~の言葉を発したとされています。

でもまた、快川和尚はなんでこの時、織田側の引き渡し要求を
にべもなく突っぱねたのでしょうか?
信長がかつて「比叡山焼き討ち(1571年)」を行ったことも
知っていたでしょうから、当然「比叡山の二の舞」になりかねない
との思いもあったはずです。

多分、快川の理屈はこうだったと思われます。
この時代の寺院は聖域、すなわち治外法権との常識がありました
から、その正当性を前面に出したのではないでしょうか?
仮に脅迫もどきの強い要求があったとしても、治外法権を守る
立場の人間が、簡単に「はい、そうですか。それではさっそく・・・」
とは言えないですものネ。

まかり間違えば比叡山の二の舞との思いもありますから、
社会的な責任を全うするか、自分の命を惜しむか、という
板挟みを味わって、かなりエキセントリックな精神状態に
なっていたのかもしれません。
で、いよいよ最悪の結果を招いたことが分かったとき、
その興奮が「心頭滅却すれば・・・」の言葉になったのでは?

非常にもっともらしい説明になって悦にいっていたところ、
これは当の快川和尚の言葉ではなく、かつて問答した相手の
僧・高山のそれであるとの別説もあることを知って、
ワタシはかなりへこみました。

もしそうなら、ここまでの整合性のある説明はいったい
なんだったのだ?
それどころか、後世の誰ぞかの言葉とする見方もあることまで
知ってさらに追い打ちをかけられてしまいました。

伝わる歴史の常として、名文句とかカッコ良すぎる行動とかには
往々にして脚色があることを知らないわけではありませんが、
それにしてもこれもそのひとつだったのか!

で、ワタシとしては結局のところ、「これは快川和尚の言葉では
なかった。」との結論をもってシブシブ納得したしたわけです。

ところがドッコイ、舞台となった恵林寺(山梨県甲州市)三門の
柱にはナント、快川和尚の言葉としてちゃんとこの文言が
記されている、とのこと!


  恵林寺三門 wikipedia
画像













いやはや、歴史って一筋縄ではいかないものですね。
あれこれ堂々巡りして損しちゃいましたゼ! まったくホントに!




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