大岡越前守&一両目の行方

ドラマでおなじみの大岡越前守(忠相・ただすけ)
実在の人物であり、町奉行として江戸幕府八代将軍・
吉宗が進めた「享保の改革」にも携わっている。
彼についての有名な逸話・いわゆる「三方一両損」は
おそらくは大岡越前守とは無関係なオモシロ話であって、
歴史的事実ではないと思われる。
しかし、そのオモシロ話が一般市民の支持を受けた
からこそ、今に伝わっている、とは言えそうだ。


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出展:Atnet Japan!
実際には「伝わらなかった」別バージョンの「お話」も
あるのだが、それは後に譲り、まずは「三方一両損」の方を
ごくごく簡単にご紹介しておこう。それはこんな話になる。

3両の大金を落とした男がいる。
一方でその3両の金を拾った男がいる。
拾い主はその旨を正直に奉行所に届け出た。
さて、確かな落とし主と確かな拾い主の双方が
判明したところで、お調べの段となるワケである。

ところが、ここで話が少しこじれてくる。
落とし主の男はその3両について、「拾ってくれた上に
テマヒマかけて正直に届け出た方が受け取るべき金だ」
と主張。
一方の拾い主の男は「落とし主が分かっているのに
受け取ることはできない。当然落とし主の金だ」
と言い張り、結局両者の言い分は平行線のままである。
そのやり取りにじっと耳を傾けていたのが、
当法廷の担当裁判官・大岡越前守だ。

ここで有名な「名判決」となる。
「両名の者の正直さを、この越前はうれしく思うによって、
このようにいたせ。
問題の3両にこの越前の1両加え、これを落とし主が
2両、拾い主が2両、それぞれ受け取れ。
これで、落とし主は本来なら3両戻ってくるところが
2両になって1両の損じゃ。また、拾い主も3両受け取れる
ところが2両になってこれも1両の損じゃ。
そしてまた、この越前も1両を出しておるから1両の損。
三方が一両づつ損をすることによって丸く収まるというものじゃ」
※見栄で1両を差し出した越前守には多少の後悔もあったらしい。

これが、現在まで伝わっている方の「お話」の粗筋である。
しかし、この「お話」では当事者(落とし主と拾い主)と
裁判官がスッカリ同化してしまっていることになる。
「公」の裁判であるにも関わらず、ここに裁判官個人の
「私」のポケットマネーを絡めているワケだから、
これでは明白に「公私混同」の所業になってしまう。

だが、「美しいお話」として、現在まで伝わっているということは
要するに、日本人の心には「法律」よりも優先させるべき
もっと「大切なモノ」が存在することを示していることになる。
では、それはなにか?それは、「丸く収まる」ことである。

このテーマの考察はまたの機会に譲ることとして、
今回はとりあえず、伝わらなかった方の「お話」を
ご紹介するに留めよう。 それは、こうだ。

大岡越前守の名判決のウワサを耳にして考えた男がいる。
相棒と組んで同じシチューションでやってみよう。
3両の金を落とした俺が2両、その金を拾ったお前も
2両・・・ということなら、結果、3両落として二人の合計は
4両になる。これならまるまる1両の得だ。そして実行!

さて、大岡越前守の今度のお裁きはどうだったかのか?
大岡越前守 「落としたお前に1両を与える。
拾って届けたお前にも1両を与える。
本来なら互いにゼロ査定を覚悟していたのだから、
双方ともが1両の得ということになる。以上、終わり!」

話の流れがナニか変?と感じた男が訊ねた。
「お奉行様、落とした3両のうちのもう1両が
行方不明ですが・・・?」
「おうおう、すっかり忘れておった。あとの1両はこの越前が
貰っておく。前回判決の際に使った分の損失補填じゃ」

さらに続けて、「本来ならば、3人ともゼロであるところを、
3人ともが1両を得た・・・ということは三方一両得である。
どうじゃ、その方どもも一両損するよりは一両得する方が
嬉しいであろう」※1両の無事回収は越前守の大きな喜びであった。

日本人は前者の「お話」には喝采をしながら、後者の
「お話」については冷たく無視をした、のである。
注記)この物語はすべてフィクションであり、平たく言えば冗談ですヨ、冗談!

ちなみに、大岡越前守には、もうひとつの有名なエピソードが
残されている。持病の「痔」にはかなり苦しんだということで、
こちらの方はどうも「ノンフィクション」のお話らしい。

一文字看板「ぢ」で有名な「ヒサヤ大黒堂」が、
家伝の「秘薬」を一般頒布し始めたのは19世紀以降のことであり、
残念ながら大岡越前守の治療には間に合わなかった・・・
というのが、冷徹な歴史的事実である。


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