「時代の転換」その儀式

授業で学んだ歴史の「江戸時代」について、みなさんはどんな
印象をお持ちだったろうか?
訊ねてみると、封建制・士農工商・鎖国・飢饉などの言葉から、
結構「薄暗い社会」をイメージしていた人も少なくないようで、
現に私もその一人だった。
では、これは本当に「正しい」印象なのだろうか?

結論から言えば「必ずしも正しくない」とは言えそうである。
それは、こういうことだ。
これは日本に限らず、世界共通の原理なのだが、政権が変わると
「新政権」は必ず「旧政権」の欠点を指摘・強調し、そのことで
自らの立場を弁護する傾向がある。
「前政権があまりにもお粗末だったから、我々がそれを潰して、
良い世の中を作りましたヨ」と、こう主張したいわけである。
言わば、時代の転換期における「お約束事」であり、一種の
「儀式」みたいなモノだ。

だから「江戸時代」から「明治時代」への移行の際も、その
セオリー?をキッチリ遵守している、と見ていいだろう。
新しい西洋文明・文化を取り入れることを国是とするためには、
その前の江戸時代を「悪く言う」または、少なくとも「低い評価」に
留めておく必要があった。

必然的に「暗いイメージ」は強調されるべきだし「国民は不幸
だった」ことにならないと、お話しが続かないのである。

西洋と付き合う「明治時代」に対して、鎖国の「江戸時代」。
「四民平等の明治」に対して「士農工商の江戸」。
まあ、こんな按配である。

では、本当に「明治」は「江戸」より優れていたのだろうか?
実はそうとも言えないのである。
日清・日露の戦争に踏み込んで多くの戦死者を出した「明治」に
対して「江戸」の260年は退屈なくらい平和で、対外戦争による
多大な犠牲者を出すことはなかった。
このことなどは、ひとつの実例である。

権力と財力のひとり占めも可能した近代国家「明治」に対して、
特権的立場にある侍には必ず貧乏が付きまとった「江戸」の
システムがそれほど劣ったモノだったとも思えない。

授業によれば「農民は生かさず殺さず」で、重い年貢に苦しんだ
ハズだが、少し詳しく見てみると必ずしもそうとも言い切れない
ようだし、また「百姓は米を食べられなかった」と言うのも、
明らかに誇張・作為がある。

世の中全体で三千万石の社会に、三千万人が暮らしていた
のなら (米の「輸出」はしていなかったのだから)
アクシデントの場合を除けば、どうにか行き渡っていたと見る方が
常識的であろう。

では「江戸時代」が飛び切りに素晴らしい社会だったかと言えば、
実はそんなこともない。
確かに「江戸時代」には、飢饉で死んでいった人もいるのだ。
しかしそれを言うなら、現在地球上で最も「進んだ国」と言われる
アメリカ合衆国にも、身体や心を病んだまま充分な治療を受け
られずに死んでいく人も大勢いる。

所詮、人が作る世に「ユートピア」はないのである。
「江戸時代」だって、その範疇にあったもので、それ以上でも
以下でもない。
※ちなみに「ユートピア」とは「どこにも存在しない場所」という意味があるらしい。

ただ、あの時期「西洋に対する憧れ」強かった分、その反動として
「江戸時代」を、よりお粗末・劣悪な社会であったことを強調したに
過ぎないのである。
その傾向が思いがけなく長く、昭和の「日本史」授業にも連綿と
受け継がれてきたために「西洋に対する憧れ」は、明治から
150年ほど経った今でも続いている。

特段の信仰心を持っているわけでもないのに、「教会」で結婚式を
挙げる、などはその「西洋憧れ症候群」の典型的な光景だろう。
漢方医学は「科学的」ではないとして、一斉に西洋医学に走った
のも、そうなのかもしれない。

言葉を変えれば、明治元年に感じた西洋に対するコンプレックス
を、日本人は21世紀の今も引きずっているのである。

※身近な例なら、私のような足の短いオジサン族の「Gパン」姿も
  「西洋憧れ症候群」そのものなのかも知れない。

画像
出展:Atnet Japan!

かくして、嵐寛寿郎扮する「鞍馬天狗」はこんな台詞を吐いた。
「杉作、日本の夜明けは近いぞ!」
これも、原作者の意識下に「明治>江戸」のイメージが
存在していたことの証拠である。

ちなみに「鞍馬天狗」は嵐寛寿郎の十八番だが、
「丹下左膳」は大河内伝次郎の十八番といってよく、
「姓は丹下、名は左膳。(シェーはタンゲ、ナはシャゼン)」
名乗りが有名である。

※お若い読者は、この辺のところは無視してくださいナ。



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