~意味深長な言葉~

古来日本人は「言葉」をとても大事にしてきたようで、それは、
言葉は天地(あめつち)をも動かす、という信仰にも発展している。
要するに「言葉」のパワーは「自然」をもコントロールできる、
そう信じていた民族なのである。
それならば、言葉のセンスはより繊細に、表現はより複雑・微妙
に深化していき「悪口・差別語」の類にも及んでいたことが想像
できる。

私はまったく知らなかったのだが、「廃帝」とか「煬帝」をどう読む
のかご存知だろうか?
「廃帝」とは、文字通りクビになった天皇の意味であり、
即位しながら結果として天皇とは認めてもらえなかった、つまり
アカラサマに言えば天皇落第生のことである。
実例を挙げれば、平安時代に孝謙女帝の後に即位した天皇も
この「廃帝」の一人である。

また「煬帝」は「隋」の皇帝(飛び切りの悪王とされている)の
名前である。
聖徳太子が「日出ずる処の天子、書を日没する処の天子に致す、
恙無きや・・・」という内容の国書を送った相手が、この隋の
「煬帝」である。

普通なら、廃帝(はいてい)、煬帝(ようてい)と読みそうなところ
だが、実は違う。
正しくは、廃帝(はいたい)、煬帝(ようだい)と読むらしい。

要するに、普通の読み方を避けて特殊な読み方をすることで、
その「ダメ加減」「欠陥性」を強調しているのだろう。
「あの方は(私共とは違って)クビになるような、まるっきりダメな
天皇でした」、「これ以上はない極悪非道の最低の欠陥皇帝
でした」と言いたいわけである。

だとすれば、この変則読み方ルールに則った「悪口・差別語」の
類がこの二つの言葉だけとは考えにくく、他にももっとあるハズ
である。

探してみよう。 「新羅(しらぎ)」はその可能性が高い。
憎っくき敵国に対して普通に(しんら)と呼ぶことがシャクだった
と考えられる。

外国に対してもあるなら、国内にも同じ感情を持つ対象もあった
はずだ。 実は武士がそれに当たるのではないか。
朝廷から見れば、自分たちのシステムに属さないばかりか、
武力を持って圧力をかけてくる、いわば「鬼っ子」「ならず者」の
ような人間達が武士なのである。

このような存在の武士に対し、朝廷側に偏見や差別意識が
まったく無かったとは考えにくい。
その前提で探してみると、少し気になる言葉も見つかるのである。

たとえば、武家の棟梁「征夷大将軍(せいいたいしょうぐん)」は
どうだろう?
普通なら(せいいだいしょうぐん)と読むところではないのか?
現に朝廷・貴族が使う言葉は「大=だい」で、たとえば、
大嘗祭(だいじょうさい)、大納言(だいなごん)、大臣(だいじん)
などである。

武士にマトモな名称を与える必要はなく、むしろ「マトモでないこと」
を強調したいがための「大=たい」ではないのだろうか。

すると、ひとつ引っかかるのは桓武天皇の時代の、いわば国軍の
司令官として朝廷システムに組み込まれていた坂上田村麻呂の
「征夷大将軍」である。
国家公務員だから差別を受ける立場ではない。

すると、彼はマトモに(せいいだいしょうぐん)ではなかったのか、
ということになりそうだ。
朝廷公家側(身内)には「大=だい」、武士に対しては「大=たい
と、キッチリ使い分けることで、武士階級を明確に差別視していた
と思えるのである。

他にもありそうだ。「源氏(げん)」はどうだろう。
これも普通に読めば(げん)だろうが、なぜ(げん)と発音する
のか。 ちなみに平氏の方は(へい)と当たり前に発音している。
同じ武士の仲間ともいえる両者だが、朝廷側からすれば、
これははっきり「異なった存在」である。

朝廷の権威を認めているがために、自ら貴族になりたがった
平氏に対し、源氏はあくまでもツッパリの態度を崩さないばかりか
力づくで権力の一部をも奪い取ったいわば「暴力団」なのである。

朝廷側が「悪口・差別語」で叫びたくなるのも無理はない。
(へい)の「平氏クン!」というニュアンスに対し、
「源氏のクソ野郎」という意味を込めているのが(げん)なのでは
ないだろうか。 英語における「ジャパニーズ」に対する「ジャップ」
という表現がこれに似ているかもしれない。

すると、ここでもうひとつの大きな問題が発生することになる。
「源氏物語」は、はたして本当に(げんものがたり)で
いいのだろうか?

この物語の主人公は貴族の源氏であって武家の源氏ではない
のだから、(武士が台頭する以前に書かれている物語である)
「源氏物語(げんのものがたり)」が正しいのではないか
とも思うのである。

話が広がり過ぎたので、ここから先はまた別の機会に譲ることと
するが、たぶん、この手の朝廷側の「悪口・差別語」の類は
多岐にわたり、探せばもっと見つけられるのではないだろうか。

現代でも「差別語」とされる言葉は使うべきでないとされているが
いつか作家の断筆宣言があったように、幾分神経質になりすぎ
ているよう気もしないではない。

このまま突き進むと、いつか「バカ野郎ッ!」とは言えなくなって、
「理解力の不充分な人め!」などと迫力のない捨て台詞を使う
時代が来るのかもネ。

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