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zoom RSS 日本史の「発明発見」19 町医者と将軍の福祉コラボ

<<   作成日時 : 2018/03/10 00:01   >>

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御三家・尾張家との間に引き起こされた激しい後継争いの末、最終的に
八代将軍の座に就いた紀州家出身の徳川吉宗(1684-1751年)は、後に
「享保の改革」(1716-1745年)と呼ばれる政治改革に取り組みました。
この意気込みの背景には、七代将軍・徳川家継(1709-1716年)の後継者を
巡る尾張藩との間で繰り広げられた経緯に、幾分かの負い目?があった
のかもしれません。

それはともかく、この「改革」?は徹底的な倹約政策と増税を基本として
いましたから、民からすれば、あまり歓迎できないものでした。
しかし、幕府自身にとってみれば、長年にわたる大きな課題であった
「財政の立て直し」の面で一定の成果を上げることができたのですから、
やはり幕政改革の功労者ということになります。
この「享保の改革」の断行が大きく貢献してのでしょう、吉宗には実際
「名君」との評価もあります。

ただし、世の中の景気、つまり社会経済の面ではサッパリ効果が上がり
ませんでした。 そりゃあそうでしょう。
「質素倹約」を是とした「経済縮小」政策?ですから、その恩恵に与るどころ
か、そのマイナス影響をモロに被る職人・商人などから、こんなぼやきが
出てくるのも当然です。 〜こんな不景気は辛抱たまらんでぇ〜

こうした「改革」の流れの中で、吉宗はいわゆる「目安箱」※の設置(1721年)
も行っています。
これは、それまで「御上の御政道に口出しするな」を基本方針にしていた
幕府が、町人・百姓たちから要望・不満を直訴させ、その声を施政に
生かそうとしたものでした。
※ 明治政府が使った呼称であり、徳川幕府は単に「箱(はこ)」と呼んだ。

もちろん時代も時代ですから、〜なんでもかんでも忌憚なく!〜」とまでは
いきません。 投書は住所・氏名の記入を条件とし、それらが揃っていない
匿名の訴状については破棄されるという一定の制約もありました。 
「匿名でもOK」にすると、結構面白半分や冷やかしの意見?が飛び交う
心配もあることは、昔も今もそれほど変わらないからでしょう。
ですから、このことは吉宗が提案者の本気度を推し量るために取った
「リトマス試験紙」だったということになりそうです。

特筆すべきは、この「目安箱」の鍵を人任せにはせず、吉宗自らが管理
したことです。
これは、鍵の扱いを家臣(官僚)に任せっきりにしていては、そこの「操作」が
働いて、重要な情報が自分に届かなくなる恐れを危惧したものでしょう。
現に昨今マスコミを賑わしている「M学園」問題でも、それに関わった当時の
財務省某局長※なぞは「データは破棄したと強弁していました。
ところが、関連資料がまったくゼロというわけでもなかったので、やはり
「情報操作」の疑念が残ったままの印象になっています。
※この後国税庁長官に収まったものの、政府はその辞任を認める人事を
  決定した旨のニュースが、つい先ほど(昨3月9日)流れました。

時代こそ違え武士も官僚ですから、この例と同様に自分たちに不都合な
情報を隠さないとは言い切れません。
そうした行為を未然に防ぐために、鍵を自己管理したのですから、要するに、
吉宗自身もかなりの本気モードで取り組んでいたことになります。

そうした中で、町医者・小川笙船(しょうせん/1672-1760年)によって、
「無料医療施設」の建設提案(1721年)がなされました。
〜最近の江戸は都市人口の増加する反面、医者にもかかれないような
  経済的困窮者を輩出しています。 
  よってもって幕府も何らかの手を差し伸べるべきなのでは?〜


このあたりの言葉遣いは慎重な上にも慎重に選ばなければなりません。
一つ間違えば「御政道批判」とも受け取られかねないからです。
もしそんなことになろうものなら、投稿者?笙船とて厳罰は避けられません。
しかし、この意見に対して吉宗は直ちに反応し、投書の翌月には、早々に
提案者・笙船を評定所に呼び出しています。

その折の笙船の具申には、吉宗自身も納得できるものがあったのか、
すぐさまこの計画を軌道に乗せるや、翌年(1722年)には開所に漕ぎつけ
ました。 ウーン、相当に素早い対応です。
〜武士には民を護る責任がある〜
吉宗自身もこうした、いわば「護民意識」を持っていたのでしょう。

赤ひげ三船52 目安箱51









映画「赤ひげ」三船敏郎/目安箱

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早速に設けられた「小石川養生所」は柿葺き長屋形式の建物で、収容
人数は40名。
笙船自身を含め、幕府医師の家柄の7名の医者が診察・治療を担当し、
幕府の肝入りということもあってスタッフも充実させる必要がありました。

与力2名が入出病人や予算の管理を行い、同心10名が総務部門を担当し、
中間8名は朝夕の病人食や看病、洗濯や門番などの雑用を担当する体制
です。 キメ細やかなのは、女性患者は女性の中間が担当するようにした
ことです。

入所した場合には治療費も入所費も日用品や寝間着なども全部無料とする、
文字通りの「全額無料病院」?は、教会系・民間系を別にして政府系に
限れば、おそらく世界的にも相当に早い時期の「超先進福祉」政策だった
こともあって、その恩恵を受ける患者側にも少なからず戸惑いが生まれ
ました。
今まで「御上の御政道に口出しするな」の姿勢で臨んできた幕府が一転、
身分の低い一町医者の意見を取り上げ、即座に行動を起こしたのですから、
なんとはなしの「不信感」は当然です。 
案の定、当初はこんな風評が立ちました。

〜あれはなァ、集めた貧乏人相手に薬草を与え、幕府がその効能を
  試験することがホントの目的なんだでぇ〜
 もっと直截に言うなら、
〜貧乏人の体を使って「人体実験」をするところらしいゾ〜
この類の風評には相当に根強いものがあったとされています。

折角の善政を誤解されたのではたまりませんから、幕府も町名主などを
対象にした見学会を開き、そうした風評の払拭に努めました。 
その甲斐あってか、入所者は次第に増加に転じたとされています。
もっとも後年には、医師の腐敗、管理者側の物品横領なども頻発し、入所
自体が「利権化」するという、現代と変わらぬ実態も呈したとされて
いますが。

そうした経緯を辿ったこの「小石川養生所」は1722年から幕末までの140年余り
の間、貧民救済施設として機能しました。
現代風に言うなら、「格差社会」における教会や民間以外の、まさしく政府
機関主導の「福祉行政」であり、「セーフティネット」になっていたことから
すれば、江戸日本の世界に先駆けた「発明発見」だったと言えそうです。

さて、もう半世紀以上も昔のことになりましたが、この「小石川養生所」
舞台にした映画作品が製作されています。
黒澤明監督「赤ひげ」※(1965年/主演:三船敏郎)です。
これを観ると、「小石川養生所」の医師や患者の日常がビジュアルに
把握できるので、ご興味の方にはお勧めしておきたいと思います。

但し、劇中に登場する「赤ひげ先生」は小川笙船本人ではありません。
劇中に〜長崎でオランダ医学を学んだ〜とする青年医師が登場している
点からすると、「シーボルト来日」(1823年)以後になり、笙船から約百年後の
文政年間(1818-1830年)の「赤ひげ」先生ということになるのだそうです。 

蛇足ですが、同じく映画では1972年「青ひげ」(1972年/アメリカ)という
作品もありましたが、これは殺人鬼が主人公。
また、「黒ひげ」というのもあって、これは18世紀の初頭にカリブ海や
大西洋の沿岸を荒らしまわったとされる海賊のニックネーム。
さらには「白ひげ」という言葉もあるようで、筆者なぞは白ヤギさんの
「白ひげ」しか思い浮かびませんでしたが、漫画「ONEPIECE」には、
ちゃんと「白ひげ」という海賊団も登場しているそうです。

この他「黄ひげ」や「緑ひげ」などの存在については、残念ながら寡聞に
して存じません。 
特段に重要ということでもありませんが、今ひょっこり頭に浮かんだので
念のために申し添えておきます。



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