ヤジ馬の日本史

アクセスカウンタ

zoom RSS 日本史の「パクリ」13 義士と浪士の天秤ばかり

<<   作成日時 : 2018/02/10 00:01   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 1 / コメント 0

日本人が大好きなお芝居ということなら、赤穂事件をモデルにした「忠臣蔵」は
必ずその上位にランクインすることでしょう。 なにせ21世紀の現代になっても、
そうしたドラマが繰り返し放送されているのですから。
もっとも、お芝居の方が有名になりすぎてしまい、史実としての
「元禄赤穂事件」※の方はいささか影が薄い印象もありますが。
※「殿中刃傷事件」(1701年)/「吉良邸討入り事件」(1703年)

お芝居はそこに登場する人物も善玉・悪玉の区別が分かりやすく作られて
いるのが特徴で、この辺は実社会とはいささか趣を異にしています。 
実際「忠臣蔵」も多くの場合、こんな構図で作られています。

善玉→パワハラ被害者・浅野内匠頭/主君思いの家老・大石内蔵助
     /忠義に殉じた赤穂藩士
悪玉→パワハラ加害者・吉良上野介/癇癪持ちの第5代将軍・徳川綱吉
     /無慈悲?な判決を下した幕府

史実としての「元禄赤穂事件」の経緯は、これほど単純なものでは
ありませんでした。
実際、芝居などでは「無慈悲?な幕府」としてひとからげにしていることが
多いようですが、実際には幕府内部でも様々な意見が出されたたようです。
代表的なのは、フランス人もどきの名を持つ「キュソー」と「オギュー」、
この両者の意見の対立です。
今、何気におしゃれ気分が顔を出してカタカナ書きにしてしまいましたが、
これではさすがに分かりにくいでしょうから普通に書き直してみます。

室 鳩巣(むろ・きゅうそう/1658-1724年)江戸幕府の儒学者。
      その後の第8代将軍・吉宗の時期にはそのブレーンとして、いわゆる
      「享保の改革」を補佐。
荻生徂徠(おぎゅう・そらい/1666-1728年)アンチ朱子学派の儒学者。 
      同じく吉宗時代には、そのアドバイザー?としても活動。

「吉良邸討入り事件」の折の藩士の行動について、実はこの二人の
儒学者の意見が大きく分かれたのです。
藩士擁護派の代表が「室鳩巣」、糾弾派の代表が「荻生徂徠」

鳩巣〜苦難を越えて主従の関係を貫き通した行動は、まったくもって義挙で
     あり、素晴らしいッ! 感動したッ!〜
徂徠〜何をおっしゃるキュソーさん、えぇかね、そもそもハナから法令・
     “武家諸法度”に違反しているのだから、その見方はモロにヘンですッ!
     モロヘンですッ!〜

つまり、同じ儒学者という立場にありながら、藩士の行動を「主君の仇討ち」、
すなわち「忠の実践」と捉えた朱子学信奉派・鳩巣に対し、一方の朱子学
否定派・徂徠は、「法律」を無視した凶悪な「犯罪行為」と判定したわけです。

元禄忠臣蔵51 荻生徂徠01







映画「元禄忠臣蔵・前編」1941年/(アンチ朱子学派)儒学者・荻生徂徠

 にほんブログ村 歴史ブログ 日本史へ  ↓コメント欄はいちばん下↓
↑応援クリックは↑

結果は、ご存知の通り「討入り藩士全員切腹」でした。
もっともこの最終判決?には、時の将軍・綱吉(1646-1709年)の意向が大きな
影響を及ぼしていたことも考えられます。

そもそも、幕府にとっては一大イベントである「勅使饗応」の、しかもよりにも
よってその当日に、その会場(殿中)で引き起こされた刃傷沙汰でしたから、
綱吉にしてみれば、これだけでも怒り心頭です。
ところが、これで一件落着かと思っているところへ、第二弾?の赤穂藩士に
よる「吉良邸討入り」ときたのですから、綱吉がプッツンしちゃうのも無理も
ありません。

〜殿中刃傷沙汰だけでも、幕府は朝廷に対して大恥をかいたのに、その上に
  老人一人(吉良吉良上野介)を集団で襲撃するなんぞは、正気の沙汰とは
  思えん! 赤穂のヤツらは一体なにを考えとるのじゃ!〜

こんな思いに駆られてしまえば「藩士救済」なんて選択肢はあり得ません。

それでも、現在でも大いに人気を博している芝居やドラマなどの「忠臣蔵」が、
鳩巣の意見に沿った形になっているのですから、案外当時の一般民衆の感情も
こんなものだったのかもしれません。
〜その行為が多少法律に触れたとしても、なにしろ動機が純粋で真面目なもの
  なのだから、そこはそれ寛大な心で迎え入れてやるのが人情というものでは
  ないのかぇ〜


それに対し、徂徠の考え方はこうなります。
〜甘いッ! 百歩譲って・・・ええぃ二百歩譲ったとしても、そのこと自体は 
  所詮「私」的な立場での行動に過ぎないものであり、法治国家である以上は
  「公」的な約束事である法律の方が優先されなければならないッ〜


ひょっとして今アナタ、この徂徠を「メッチャ堅苦しい奴だなあ」と思いません
でしたか?
多分、当時の人々も同じ印象を持ったことでしょう。
ところが不思議なことに、この徂徠の「メッチャ堅苦しい」意見もまた、
日本人の好みに合っているんですよね。

〜♪義理と人情を秤にかけりゃ、義理が重たい男の世界・・・〜
  (「唐獅子牡丹」/作詞:水城一狼・矢野亮|作曲:水城一狼)
この言葉を「吉良邸討入り」に当てはめればこうなります。
〜「人情」(私的感情)より「義理」(公的ルール)を重視することの方が
  日本人たるべき正しい態度である〜


「徂徠路線」を応援するかのような歌曲が大ヒットした反面で、「鳩巣路線」
作られたお芝居が、現在なお高い人気を集めているのですから、日本人って
(その自覚はないものの)根っからの「ダブル・スタンダード」(二重規範)
愛好家?なのかもしれません。

それはさておき、ではその「法治国家」を自負する現代日本で、実際にこの
「赤穂事件」が起きたとしたなら、現在の私たちは、一体どのような反応を示す
のでしょうか? う〜ん、実はある程度の想像はつくのです。
おそらくは、
赤穂藩士に「AKR47(赤穂浪士)」とか、はたまた「AKG47(赤穂義士)」とかの、
すこぶる軽〜い名を冠した上で、その行動の是非は「総選挙」で決めよう、
ってなことに?

話題性のある「パクリ」ですが、ここには自らの信条を貫いて
「人情」(美しい忠義)重視を訴えた室鳩巣の姿も、また泥をかぶる覚悟で
「義理」(社会の法治)を主張した荻生徂徠の姿もありません。

これを「平和な風景」と捉えるべきか、あるいは「能天気な風潮」と嘆くべきかは
よく分かりませんが・・・まあ、それはそれとして、個人的には「AK○47」の方に
一票を投じようかと考えている筆者です。



 にほんブログ村 歴史ブログ 日本史へ  ↓コメント欄はいちばん下↓
↑応援クリックは↑



−−−これまでの 「パクリ」 シリーズ−−−−−−−−−−−−−−−−
444 日本史の「パクリ」12 頭のテッペンに“愛”がある その主張はどんな愛?
396 日本史の「パクリ」11 SF?占領軍の”降臨と神器” 日本人の伝統行動 
343 日本史の「パクリ」10 日本の“真ん中”ってどこ? あちらこちらが「ここ」! 
314 日本史の「パクリ」09 熱田の杜に奇ッ怪空間! ミスマッチ?なコラボ
269 日本史の「パクリ」08 我が血統が治めるべき国 似て非なる統治姿勢!
233 日本史の「パクリ」07 お宝”北条氏”頂きました リサイクルなら手早いゾ!
152 日本史の「パクリ」06 祝言から神前そして”空前”へ 追いつけない神々
128 日本史の「パクリ」05 ビジネスモデルは目の前に 一人だけ気が付いた!
094 日本史の「パクリ」04 血筋をブランドに! ブランド好きな日本人!
077 日本史の「パクリ」03 ヘソクリ妻とチャッカリ夫 努力なしで出世しよう!
041 日本史の「パクリ」02 二世と三代 将軍・家光の直筆が動かぬ証拠だ!
040 日本史の「パクリ」01 天照と東照 徳川家の天皇家コピー大作戦!
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ヤジ馬の日本史〜超駄級・400記事一覧〜 301−400編 颯爽ろくでな史!
ヤジ馬の日本史〜超駄級・300記事一覧〜 202−299編 堂々肩すか史!
ヤジ馬の日本史〜超駄級・200記事一覧〜 後編「な→ん」巻 あゝ七転八倒!
ヤジ馬の日本史〜超駄級・200記事一覧〜 前編「あ→と」巻 七転び八起き!
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−






テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
ヤジ馬の日本史〜超駄級・500記事一覧〜 401−499編/満腹にぎりめ史!
これまで書き連ねた記事が通算500本に到達しましたので、 今回その節目として改めて直近100編(400〜499)を 整理してみました。 全編粒揃いの「超駄級」であることから、全国津々浦々の ヒマ人様からは、「時間潰し」の最適ツールとして、割合に 控えめなご好評?も頂いております。  管理人:住兵衛 ...続きを見る
ヤジ馬の日本史
2018/05/15 18:09

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文
日本史の「パクリ」13 義士と浪士の天秤ばかり ヤジ馬の日本史/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる