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zoom RSS 日本史の「災難」05 百姓って誰のことさ?

<<   作成日時 : 2017/04/10 00:01   >>

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「士農工商」とは、元々は中国・儒教が生んだ概念であり、日本では
江戸時代の身分序列を表わしたものとされています。
ところが、その下にさらに付け加えた「士・農・工・商・穢多・非人」という
表現もあったようで、これが部落差別を連想させる不適切?な言葉と
されました。
その共犯?と見做されたものか、現在では元々の「士農工商」までもが
放送禁止(自粛)の扱いになっているとのことです。

また学校では、「四民」の序列を偉い順に並べたのがこの「士農工商」
だと教わったものですが、これにもどうやら誤解を指摘する向きもあり、
〜きっちり四段階に区分けをしたものでもなく、その実態は「武士/
  百姓・町人」
、現代言葉なら「官/民」の色分け程度のものだった〜
 
そういうことなら、下に並ぶ「農工商」の三つは上下の序列ではなく、
単に「職業分類」と受け止めた方が、当時の実態に近いということ
なのかもしれません。

またそのトップに掲げられた「士」も、儒教の本場・中国では「士大夫」
つまり「官僚」を意味しましたが、日本では一般的に「武士」を指すもの
と理解していますから、これにも誤解があったことになりそうです。

ここまででも結構煩わしいものがありますが、さらに日本の場合は、
この「士農工商」にうまく当てはまらない人も多く存在していました。
たとえば、公家・僧侶・神主・検校・役者などがそうですが、こういう方
たちは、「士農工商」で示すことができず、この「四民」の特例?枠外に
あったとされています。
その意味で「士農工商」は、必ずしも全国民をあまねく網羅した表現では
なかったわけです。

その上に筆者個人的には、こんな疑問も抱えていました。
「農工商」以外の生業・・・たとえば、漁師・猟師・樵(きこり/林業)などは、
どこに当てはまるものか?
答えは単純明快で、どうやらまとめて「農」にひっくるめていたようです。

ところがさらに複雑なお話もあって、言葉にすれば「貧農長者」?と
呼びたくなるような人々もいました。
〜ウーン、なんで「貧農」(貧乏人)が「長者」(大金持ち)なのだ?〜

要するに、こんな按配でした。
現代の言葉なら「課税対象」、これに該当するほどの土地を持てない
(あるいは持たない)者、つまり四民区分の「農」の中でも無石高の
「小作人/水呑百姓」の範疇にあった者が、海運業や手工業などに
乗り出して、財を成したという実態があったのです。

時代劇などでよく耳にする「水呑百姓」という言葉と、この「実業家」
「資産家」というイメージは、なかなか素直に結びつきませんが、
史実としてこのパターンは決して少なくなかったとされています。

士農工商52 廻船交易51







士農工商/廻船交易

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さらに理解がややこしい言葉もあります。 この「百姓」です。 
一般的には、「百姓=農民(農家、農業従事者)」と理解されていますが、
これもまたどうやら日本だけで通用する常識?のようです。
日本ではこれを「ひゃくしょう」と読みますが、日本以外の漢字文化圏では
「ひゃくせい」と読み、その意味も普通には
〜多くの役人または人民のことを指す〜とされているからです。

「百姓」を直訳?すれば、「百=多く」の「姓=血縁集団」ということに
なりますから、固い言葉なら「天下万民・民衆一般」であり、もう少し
現代風の表現なら「一般国民」ほどの意味に受け取るのが自然なのかも
しれません。

少々乱暴な括りをするなら、要するに日本の場合は「農工商」のすべてが
原則的に「百姓」で、その中の職人・商人など、主に町に住む者が
いわゆる「町人」である。
こう解釈するなら、その他の農民・漁師・廻船業者などは、ひっくるめて
「百姓」と呼んでも構わないことになりそうです。

しかしこの「百姓」という言葉も、現代では職業に関する侮蔑語に当たる
との判断で、放送禁止(自粛)の対象になっているようです。 
では、どう表現したらいいものか?
「農民・農家の人・お百姓さん」などの表現が望ましいとされていますが、
実はこれでは「百姓=農民」との誤った?見解を誘導していることにも
なってしまいます。 お気を付けくださいね。

最後に、この「百姓」という言葉に関する、とある歴史学者さんの災難? 
その学者さんが、新聞記者数人に、
〜貧しい村の「百姓」のひとりがそれなりの船を持ち、松前(北海道)まで
  行く廻船交易をしていた、という文書が残されている〜

こんな紹介したところ、記者の側からこんな質問が。
〜先生、なんで「農民」が松前まで行ったのですか?〜

この記者には「百姓=農民」という思い込みがあると踏んだ学者さんは、
そこで2時間ほどを費やして「百姓」についてレクチャーしたそうです。
〜この場合の「百姓」とは「農民」の意味ではなく、船商売をやっている
  「廻船人」のことを言っているのですよ〜


丁寧・熱心な説明に記者もやっとのこと、この場合の「百姓」の意味を
理解できたようでしたから、学者さんは新聞記事を楽しみにしていました。
ところが、学者さんが目にしたその記事の「見出し」は、なんと、
農民も船商売に進出〜 
肝心の「百姓」の部分が「農民」にアレンジ?されていたのです。

「百姓」の意味について、十分な説明を受け理解できたはずの記者が、
なぜこんな「筋違い」な見出しにしちゃったのか?
実はこの「百姓」という言葉も、新聞界では一種の差別用語扱いをされて
いるために、おそらくは新聞社側の自主規制?が働いたのでしょう。

しかし、この「善意の改編」?によって、学者さんが伝えたかった
「歴史の姿」はまるで異なるものなってしまいました。
その意味で、「士農工商」「百姓」などの言葉を、滅多やたらと放送禁止
(自粛)や自主規制してしまうことの弊害は決して小さくはないゾ、という
ことになりそうです。


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