「殿中“刃傷”事件」と聞けば、真っ先にイメージするのが 芝居・ドラマ「忠臣蔵」のモデルにもなったことで有名な、 あの「元禄赤穂事件」でしょう。 ところが、実は同じような 事件はそれより以前にも起こっているのです。 この「赤穂事件」より十数年前も前のこと、若年寄・稲葉正休 (1640-1684年)が、大老・堀田正俊(1634-1684年)を斬殺※した 事件がそれで、こちらは“刃傷“どころかれっきとした”殿中 殺人事件”でした。 ※なんと「特注刀」で一突き! 被害者の大老・堀田は即死ではなかったものの同日中に死亡、 一方、加害者の若年寄・稲葉も、その場にいた者たちに メッタ斬りにされ死亡するという凄まじさで、もちろん犯人の 稲葉家はその後に改易、つまり“取り潰し”の処分を受けました。 で、この“殺人事件”に肝を冷やしたのが幕府総務課?で、 将軍のお住まいである江戸城内で、二度と再びこんな事が あってはならじと、それまであまり意識されていなかったと将軍と 老中の往来まで見直すことにしました。 つまり、将軍の身の危険を避けるために、以後は重臣たりとも そう簡単には直接のお目見えができないようにしたわけです。 業務連絡は「秘書」?を通じて行うこととし、この「取次秘書」が 後に「側用人」という名称で呼ばれることになります。 こうなると、将軍と重臣たちとの唯一のパイプ役となる「側用人」 の意味・地位は、単に危機管理の面だけではなく、当然政治の 実務・運営面でも高まっていくことになるわけです。 それはともかく、この“殺人事件”では実際に犯人・稲葉正休が その場で“惨殺”され、しかも“お家取り潰し”という厳罰も食らった のですから、普通の人間なら誰しも肝に銘ずるところです。 処分を下した側の幕府もおそらくはそう考えたことでしょう。 ところが中には懲りない者もいて、殿中“刃傷”事件は再発しま した。 それが先の「元禄赤穂事件」(1701年)です。 では、犯人?浅野内匠頭(1667-1701年)は十数年前の“稲葉事件” を知らなかったのか? いいえ、決してそんなはずはありません。 ![]() 刃傷 松の廊下 応援クリックは→ ![]() “稲葉事件”の当時、浅野内匠頭は18歳ですから犯人惨殺の 経緯も耳にしていたことでしょうし、お家取り潰しという結果も 十分に理解できていたはずです。 なのに、35歳にもなって浅野内匠頭はやっちゃった! 幕府が見せた“一罰百戒“のメッセージも浅野内匠頭には 伝わらなかったということです。 実は面白いことに(奇しくも、というべきか)、前回の“稲葉事件”も 今回の「元禄赤穂事件」も、なんと、五代将軍・綱吉(在任:1680- 1709年)の時代に発生しています。 なにしろ、メッセージ発信後の「再発」ですから、「赤穂事件」の折に 見せた綱吉の「激しい怒り」にもそれなりの納得がいこうというもの です。 自宅?である殿中でこうした事件が繰り返されたことに対する 憤懣・苛立ちも確かにあったのでしょうが、それ以上に学習能力 のない“バカ人間“に対する嫌悪感があったと思われます。 〜バカか!お前は・・・殿中で刀を抜けば、どういう結果を招く ものか、それを耳にしたことがないとは言わせないゾ〜 なにせ、たかだか十数年前に衝撃的な前例があるのですから、 綱吉の言い分は筋が通っています。 こうした声は、実は綱吉以外からも寄せられました。 〜浅野ォ、バカか!お前は・・・標的?を「一突き」にして仕留めた 稲葉正休という立派な?お手本があるのにヨゥ、それを わざわざ烏帽子(兜?)※の上から斬りつけるなんざ、まったく もって武士の恥さらしだぜ〜 ※「縁」の仕様は薄鉄板入りだったとか。 ですから、当時の見方からすれば、綱吉は“常識”派の人間、 一方の浅野内匠頭は“バカか!お前は”派の人間だったことに なります。 ところがどっこい、現在ではそれがスッカリ逆転しちゃって、 綱吉が悪法「生類哀れみの令」を推進した稀代の“バカ将軍”、 それに対して浅野内匠頭は芝居「忠臣蔵」でちゃっかり “悲劇の主君”の座に納まっているのですから、歴史の評価って メッチャ怖いものですね。 その点、ワタシなどは歴史の流れなんぞに左右されることもなく、 ずぅ〜っと長い間安定した人物評価を頂いています。 「とことん人畜無害」・・・正直なところ喜びも今一歩ですッ! 応援クリックは→ ![]() −−−これまでの 「逆転」 シリーズ−−−−−−−−−−−−−−−−− 225 日本史の「逆転」11 日本列島ウラオモテ 見慣れないから盲点に? 213 日本史の「逆転」10 貧乏だけど大金持ちだゾ 金はどこから流出した? 206 日本史の「逆転」09 虚像は実像を駆逐する 根も葉もあるウソ八百? 198 日本史の「逆転」08 世界遺産は○○のお蔭? 負の遺産?が脚光を! 181 日本史の「逆転」07 地名は”上”だが地図では”南”? 先人は方向音痴? 177 日本史の「逆転」06 将軍家激震スキャンダル 権力抗争の黒い霧? 161 日本史の「逆転」05 切れない名君と斬る暗君 殿様が背負った新任務? 151 日本史の「逆転」04 武士の正座と胡坐 おお、足の裏同士がぴったり! 122 日本史の「逆転」03 秀吉のシックス・センス 窮地で発揮した超能力? 119 日本史の「逆転」02 木曽三川 レ・ミゼラブル! 積もった恨みが爆発! 107 日本史の「逆転」01 “謎の絵師”に謎はない 謎は後から作られた? −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ヤジ馬の日本史〜超駄級・200記事一覧〜 前編「あ→と」巻 七転び八起き! ヤジ馬の日本史〜超駄級・200記事一覧〜 後編「な→ん」巻 あゝ七転八倒! −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− |
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