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zoom RSS 日本史の「世界標準」04 神君孫の歴史書

<<   作成日時 : 2012/07/25 11:00   >>

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なにしろ1657年に着手し、完成したのが二十世紀に入った
1906年(明治39年)のことですから、その間なんと250年!
ウムム! やはり、この徳川(水戸)光圀の「大日本史」は
「大事業」と言っていいのでしょう。
ところで、なんでもまたこんな途方もないことを始めたの?

動機についてはいろいろ言われていますが、そのひとつに
当時なりの「世界標準意識」があったものと想像されます。
もちろん当時の日本にとっての「世界標準」とは隣国・中国の
「中華思想」であり「儒教」でした。

ところが、その本家?中国ではこの少し前に「「明」が滅んで
「清」に変わるという激動を体験しています。
すなわち、誇り(埃ではない!)高き世界に冠たる漢民族が、
こともあろうに周辺野蛮人に過ぎない満州民族にやられちゃう
なんてこと・・・つまり「中華思想」からすれば「あり得ないこと」
が起こってしまった時期なのです。

このシビアな現実を「半中華思想・半儒教」感覚の持主である
「日本」はどう見たのでしょう?
多分この位のことは思ったのかも。

〜なんだヨ、今まで偉そうなことを言っていたけど、野蛮人に
滅ぼされてしまうなんて、結局のところ中途半端なマガイモノに
過ぎなかったんだ。 その点からすれば、そういうことのない
わが国こそが正真正銘のホンマモンなのだ〜

そう、今まで幾分かは感じていた「中国本家・日本分家」の意識
がガラッと転換したことになります。
だって、「本家」がなくなってしまった以上、「世界標準」すなわち
正しい「中華思想・儒教」を伝えられるのは自分達をおいて
他にはない、ということになりますヨ、これは。

今回のアクシデント(明が滅び清が興る)によって、この「人類の
英知」が後世に正しく伝わらないとしたら、これこそ由々しき
事態である。 危機だ!ピンチだ!絶体絶命だ!
こういう時こそ「ニュー本家」である我らが頑ばらなくっちゃ!

それには、まず他国からマガイモノと誤解されるようなことが
あってはならない。

だとしたら、滅び去ったマガイモノの旧本家とは異なり、革命の
洗礼も受けずに、ず〜っと万世一系の天子様をいただいておる
事実をきっちり強調した上で、国家としての「履歴書」もきちんと
整備し、「ニュー本家」にふさわしい由緒正しい民族である旨を
シッカリ表明しておくべきであろうヨ! その結果・・・

〜さあ、始めよう!日本の歴史書づくり!〜という運びになった
のでは? 
とにかく、新しく我こそが「グローバル・スタンダード」になろうと
いうのですから気合が入らないワケがない!

画像 この光圀の「歴史編纂」は、
 40年ほど(光圀存命中)で一旦
 はほぼ完成させたようですが、
 「まだまだ足りないッ!」という
 人もいて、最終的には全397巻
 226冊(目録5巻)の形に。
 出展:常盤神社 水戸黄門 ホームページ

そもそも光圀は、この作業に何を求めていたのでしょうか?
日本へ亡命してきた明朝遺臣の儒学者・朱舜水を招聘している
ことからしても、儒学史観のレベルアップを目論んだのは事実で
しょう。

ちなみに、それまで逆賊の評価を受けていた「楠木正成」が、一転
「忠臣」としてイメージ・チェンジされたのもこの儒学者・朱舜水の
影響が大きかったとされています。
さて、この学習の結果がこんな言葉になって現れます。

「徳川本家は親戚頭に過ぎず、真の主君は天子様である」
つまり、徳川の御三家(水戸家)の当主本人がこう言っていること
になります。 「わが国の正当な統治者は朝廷(天皇家)であり、
断じて徳川家ではありゃ〜せんゾ!」 

まあ、多少は「ニュー本家」になることへの気負いがあったのかも
知れませんが、それにしても徳川家内部の人間の発言としては
結構強烈で過激ではありませんか。

この思想が幕末の統幕運動の思想・行動に「正当性」、すなわち
「幕府を倒してなにが悪い!」の考え方をもたらすことになります。

そもそも、家康が幕府の学問として儒学を取り入れた目的は
各藩に対して「幕府に逆らうことは絶対に正しくない」とする意識を
徹底させるためだったのですから、「孫・光圀」によってまったく
正反対の思想に作りかえられてしまったことになります。

とすれば、信じられないほど裏目に出たことになり、家康にとって
光圀は「不肖の孫」だったのかも知れません。

実際のところ、幕府自身は「先端科学である儒学」と認識していた
ようですが、この点ははやり「宗教である儒教」という理解の方が
正しかったのかもしれません。
科学というよりは宗教だった・・・20世紀の「共産思想」もその通り
だったことを少し年配の方なら記憶されているのでは?

儒教に限らず病気や飢饉や災害についての昔の人の対応ぶり
を見て、現代人は「迷信に振り回されていたナ、アハハ・・・」と
ばかりの感想を抱きやすいのですが、ドッコイ!ちょい待ち!

対象が少し違っていただけのことで、「迷信に振り回される」という
点では昔の人も現代人も、実は負けず劣らずの五十歩百歩、
すなわち「実力伯仲」と言えるのかもしれませんゾ。


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